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こちら秘封探偵事務所第13章 輝針城編   輝針城編プロローグ

所属カテゴリー: こちら秘封探偵事務所第13章 輝針城編

公開日:2019年08月31日 / 最終更新日:2024年07月19日

輝針城編プロローグ
 平等とは何か。それは外の世界における、人類社会永遠の命題のひとつであろう。
 平等を求め、差別のない世界を望む者は多かれど、では真の平等とは何か、完全に平等で差別のない世界とはどんな世界かと問われ、万人を納得させる答えを持つ者はおるまい。人類の営みには常に完全な正解はなく、その中からなるべく正解に近いものを探し続けることこそが人類社会の歩みと言ってもいい。
 いずれにせよ、「平等」という概念が生まれるのは、この世界が平等でないからである。社会には常に強者と弱者があり、人はどんな些細なことでも優劣を競い合う。弱者と弱者の間ですら、奴隷としての鎖の長さを比べ合うのは日常茶飯事だ。
 おっと、誤解しないでいただきたいが、別に陳腐な社会論を述べたいわけではない。こんなカタい話から始めたのは、今回の我らが《秘封探偵事務所》の事件簿が、それについての物語だからである。即ち、幻想郷における強者と弱者について。
 もちろんこの幻想郷にも、強者がおり、弱者がいる。何者が強者で何者が弱者であるかは視点の置き所によって千変万化するにしても、気ままな妖怪の間でさえ、賢者クラスの強大な妖怪と、そのへんの弱小野良妖怪の間に厳然たる格差が存在するのは事実である。
 人の世も妖怪の世も、強者が弱者を支配することで秩序が生まれ、権力に基づいた一定の統制によって社会が成立する。権力が存在しない社会は秩序のない混沌だ。
 しかし、その格差、その抑圧が存在するからこそ、それに抗う者がいつの世も現れ、社会の基盤を揺るがしていく。強者の足元に踏みつけられた弱者のレジスタンス、下剋上。革命の狼煙が既存の価値体系を破壊し、新たな価値体系を作っていく。弱者が強者に反転し、権力者は野に下り、別の権力が生まれていく。
 だが、革命は失敗するからこそ美しいともいう。成功してしまった革命は、既存の権力を打破する代わりに、自らが新たな権力として秩序を生み出さねばならない。革命の夢は薄汚れた現実に変わり、新たな革命の下地を生み出していくだけだ。
 だからこそ、失敗した革命家は、夢に殉じた美しい偶像のままでいられるのだろう。
 今回の異変は、つまりはそんな叛逆の物語だ。

 道具の叛乱。付喪神の発生。野良妖怪の暴走。
 宗教戦争の混乱が収まった幻想郷を襲った、未曾有の事態。
 それを引き起こしたのは、たった二人のレジスタンスだった。
 小人族の末裔、少名針妙丸。
 逆襲のアマノジャク、鬼人正邪。
 幻想郷の弱者が起こした下剋上の異変は、いったい何を残したのか?

 そしてもちろん、今回もまた、この物語は我が相棒の誇大妄想的推理の記録である。
 今回の異変は、犯人も動機も首謀者も、明白によく知られている。
 この、誰もが知る異変の真実の裏に――宇佐見蓮子の目は、何を見たのか?

 さて、それでは語り始めるとしよう。
 幻想郷に叛逆した無謀なるレジスタンスの物語を。
 そして、それを首謀した一匹のアマノジャクの物語を――。

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この小説へのコメント

  1. お待ちしておりました!
    読むのが楽しみです!

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