かの奉る不死の薬に、また、壺具して、御使ひに賜はす。勅使には、つきの岩笠といふ人を召して、駿河の国にあなる山の頂に持てつくべき由仰せたまふ。嶺にてすべきやう教へさせたまふ。御文、不死の薬の壺並べて、火をつけて燃やすべき由仰せたまふ。その由承りて、つはものどもあまた具して山へ登りけるよりなむ、その山をふじの山とは名づけける。その煙いまだ雲の中へ立ち上るとぞ言ひ伝へたる。
「……話は終わりかしら?」
「ええ、ご静聴ありがとうございました」
「そう。――それで貴方は、私にその話を聞かせることで、何を求めているのかしら?」
目を細め、永琳さんはそう訊ねる。その視線の剣呑さに、私は身を竦めるけれど、相棒は相変わらず意に介した風もなく、「さて」と肩を竦めた。
「そうですね。求めているとすれば――この推理を根底から粉砕する真実ですかね」
その答えに、永琳さんは眉を寄せた。
「貴方は、自分の考えを私に否定してもらうために長々と語ったというの?」
「所詮、私の考えたことは限られた断片的な情報から組み立てた推論です。これが唯一無二の正解だなどと自惚れるつもりはありませんわ。だから――私が求めるのは、私の想像も及ばなかったような、これ以上の真相です」
「――――」
「もちろん、それがそちらの語れるものであるならば、ですが――」
「……それなら、私から言うことは何もないわね」
腕を組んで、永琳さんは息を吐き出す。
「それとも、ここで私がその話を否定しなければ、貴方はこれを輝夜に吹聴するのかしら?」
「論破していただけるなら黙って引き下がりますし、そうでなくてもデタラメを姫様に吹き込むことまかりならぬと仰せなら、その通りに。――仮に貴方たちが完全な不老不死でないのだとしても、終わりが来るのは私たちの寿命などより遥かに先のことなのでしょうから」
「終わりなど来ないわよ。私と輝夜には、永遠に」
「では、そういうことにしておきましょう。――ありがとうございました」
ぺこりと一礼して、相棒は私を促して立ち上がる。私も慌てて永琳さんに頭を下げて立ち上がった。――と、部屋を出ようとした相棒の背中を、永琳さんが呼び止める。
「宇佐見蓮子さんだったわね」
「はい、なんでしょう?」
「貴方――不老不死になる気はない?」
どこか、面白がるように、永琳さんはそう言った。
その言葉に、相棒はゆっくりと振り返り――帽子を、目深に被り直した。
「たいへん、魅力的な申し出ですが――今のところは、ご遠慮しておきますわ」
私は思わず目を見開く。――いつか、相棒と交わした会話を思い出したから。
『不老不死の薬? もちろん、使うわよ』
かつて、不老不死について語ったとき、相棒は私の問いにそう答えたのに――。
「あら、どうして? 貴方、地上の人間にしておくには勿体ないわ」
「これはこれは、過分なお褒めの言葉、恐縮です。――ですが」
と、相棒は不意に、私の肩を抱き寄せる。突然蓮子の顔が近付いて、私は自分の顔が赤くなるのを感じた。ちょっと蓮子、そんな急に何を――。
「永遠を過ごすなら、私はメリーと共にでなくては」
「ちょ、蓮子――」
「メリー、不老不死になりたい?」
私の目を覗きこんで、相棒は問う。私は自分が赤面していることを悟られたくなくて、口を閉ざして顔を伏せ――それから相棒の問いかけが頭に浸透してきて。
不老不死になりたいかと問われれば――答えは、ノーだ。
私は、永遠を受け入れられるほどに、狂ってはいない。そう思う。
だから私は、ゆっくりと首を横に振る。
「――というわけですわ」
「そう。……気が向いたらいつでも、私に声を掛けて頂戴。私と輝夜で良ければ、永遠に付き合ってあげられるわ」
「覚えておきますわ」
我が相棒はどこまでも平然とそう笑って答え、永琳さんは私たちに背を向ける。
――何でもいいけど、そろそろ放してくれないかしら。
私はぐるぐると、とりとめなく回る思考の中で、そんなことを考えていた。
◇
――ともかく。
今回の相棒の誇大妄想を一言で説明すれば、これは心中の物語だったのだということになる。
生と死を拒絶した月に暮らす者が、死ぬために不老不死となった。月では死ぬことさえできないから、地上でかりそめの永遠とともに、果てしない未来にある魂の摩滅を目指す。
永琳さんと輝夜さんは、そんなあまりにも気の長い心中の真っ最中なのだと。
あまりにも逆説的すぎるその推理が、果たして真実の一端を掠めていたのか。
それとも、相棒の過剰な妄想力が生み出した、推理小説的幻想に過ぎないのか。
――永琳さんが何も語らない以上、それは私たちには解りようもないことだった。
◇
永琳さんとの話を終えたあと、私たちはてゐさんとイナバたちに捕まって、外出から戻ってきた輝夜さんたちとお月見をすることになった。
「あらあら、いつかの人間。永琳に改造でもされた?」
「何ですか改造って。姫様は神社に行ってらっしゃったとか?」
「ええ、ちょっとした楽しい遊びに、この前の人間を誘ったの」
「遊び?」
「そのうち解るわ。それまで私たちはお月見を楽しみましょう」
そんなわけで、永遠亭の縁側に私たちは集まる。鈴仙さんたちが作ったらしいお団子を並べ、庭で戯れるイナバたちとともに満月を見上げた。
「蓮子、あんまり満月を見上げない方がいいんじゃなかった? また目が見えなくなっても知らないわよ」
「そのときはまたメリーに介護してもらうわ。――ん、お団子美味し」
「私はもう嫌よ、蓮子の介護をするのは」
「あらひどい。老後は切実な問題よ?」
「何十年後の話よ。っていうか私はおばあちゃんになっても蓮子から離れられないの?」
「寂しいこと言わないの、メリーってば。どこにも行かないでよ」
「人をどこにも行く宛てのない世界に連れてきておいて、全く」
嘆息する私に、蓮子が猫のような笑みを浮かべる。「仲が良いねえ」とてゐさんが笑い、鈴仙さんは微かに口を尖らせて黙している。彼女だけはいつも通り不機嫌そうだ。
「れいせーん、不景気な顔してないで遊ぼうぞー」
「不景気で悪かったわね。てゆかあんたたち、私が準備してる間もずっと遊び呆けてたでしょうが。全く……」
「あら鈴仙、そんなに月に帰りたかった?」
「え? あ、姫様、いえ、そういうわけでは……」
「残念だけど、帰さないわよ」
屋敷の奧から、永琳さんが姿を現す。永琳さんは私たちをちらりと一瞥したあと、輝夜さんの隣に腰を下ろして、鈴仙さんを見やった。
「ウドンゲを帰したら、雑用係がいなくなるもの。誰が炊事洗濯掃除をするの?」
「お、お師匠様ぁ」
「そもそも、屋敷が穢れだらけになったのも元を質せば鈴仙のせいよね?」
「ひ、姫様まで」
「そう。だから責任をとってきりきり働くこと。それとも、薬の実験台の方がいいかしら?」
「……はいぃ、働かせていただきます」
がっくりと肩を落とす鈴仙さんに、永琳さんと輝夜さん、てゐさんが笑う。――まあ、何はともあれ、楽しそうで何より……なのだろうか。
――と、庭で跳ねていたイナバたちが不意に騒ぎ始めた。私たちもそちらへ視線を向けると、屋敷を囲む塀の向こう側、竹林の闇の中に、色とりどりの光が飛び交っている。あれは――弾幕ごっこの光ではないか。しかし、誰が?
「あら、始まったみたいね」
輝夜さんがぽんと手を叩いて楽しげに言った。――炎めいた赤い光が明滅する。ということは、あれは妹紅さんか。私は思わず輝夜さんを振り向く。まさか、霊夢さんたちをけしかけて妹紅さんと戦わせているのか?
「もこたんが退治されるのを、ゆっくりお団子食べながら見物といきましょう」
どうやらそういうことらしい。私は相棒と顔を見合わせるが、弾幕ごっこの中に私たちが飛び込んでいっても、やれることはない。流れ弾に当たって怪我をするのがオチである。
「蓮子、突っ込んで行ったりしないでよ」
「しないわよ。犯人はここにいるんだし、安全圏から見物だけするわ。――妹紅なら、少なくとも殺されちゃうってことはないわけだしね」
いいのかそれで、とは思うが、それ以上できることもない。私もお団子を食べながら、竹林の合間に見え隠れする光の応酬に目を細めた。
「地上もなかなか、綺麗ね、永琳」
「……そうね」
横目で見ると、輝夜さんが永琳さんに身体を預けて、そう囁いていた。永琳さんはその肩を抱いて、慈しむように輝夜さんの長い黒髪を梳いている。その横顔は、ふたりとも幸せそうだった。この地上で、永遠を分かち合ったふたりは、どこまでも自然に寄り添っている。
それなら、この物語の真の姿がどうであれ、全てはそれでいいのかもしれない。
少なくとも、輝夜さんの幸せそうな横顔に、私が挟める言葉など、何ひとつなかったから。
◇
お月見と弾幕ごっこ見物が終わり、永遠亭を辞去したあと、私たちは妹紅さんと合流して、あばら屋へ戻った。妹紅さんはボロボロの格好だったが、平気そうな顔でぶつくさ言っていた。
「ああ、あれってやっぱり霊夢ちゃんたちだったの」
「ああ、輝夜の奴にそそのかされて、肝試しに来たんだとさ」
私たちが永遠亭から見た光の饗宴は、やっぱりそういうことだったらしい。
「まあ、私は死なないから痛めつけられても平気だけどな。……正直、仕事を邪魔されて気が立ってる慧音を落ち着かせる方が大変だったぞ」
眠る慧音さんを見下ろしながら、妹紅さんはため息をつく。布団ですやすやと寝息をたてる慧音さんは、既に角も尻尾も消えた人間の姿だ。
「しかし――竹林の外には面白い連中がいるもんだな」
腕を組んで、妹紅さんは蓮子をちらりと見ながらそう呟く。
「お前たちといい、こうも怖がられないと調子が狂う。流浪の千三百年はなんだったんだ?」
「それだけ人間が進歩したってことじゃない?」
「進歩なのかねえ。死なない人間ばかりじゃ世界が永遠の一回休みと同じだぞ」
「死ぬ人間、死なない人間。死ぬ妖怪、死なない妖怪。どれもいるのが幻想郷。死なない友達が増えるのも、妹紅には悪くないんじゃない?」
「――寂しいこと言うなよ。お前たちも慧音も、死ぬ人間だろう?」
「あら、これは失礼」
目を細めた妹紅さんに、蓮子はおどけて頭を下げる。妹紅さんは立ち上がり、ひとつ伸びをして、朝になろうとしている竹林を窓から覗いた。
「この千三百年、死ねるものならさっさと死にたいって、ずっとそう思って来たけど――案外、生きてるのも悪くないかも、しれないな」
◇
――私たちの見届けた〝永夜異変〟の物語は、これで全てである。
だからこの記録もここで終わりにすべきなのかもしれないが――最後に、私たち自身の話を少しだけ記しておこう。
永遠亭でのお月見の数日後。夕刻になって、そろそろ事務所を閉めようかと思っていた頃に、珍しい来客があった。
離れの玄関を開けると、そこにいたのは里ではあまり見かけない、紅白の巫女さんである。
「霊夢ちゃん?」
「お邪魔するわよ。――あんたたち、ここで何やってんの?」
「ここは世界の秘密を解き明かす私たち秘封倶楽部の前線基地よ」
「いつものことだけど、外来人の考えることはよく解らないわね」
呆れたように言いながら、霊夢さんはずかずかと離れに上がり込み、勝手に座布団に腰を下ろした。私たちも彼女に向き合う格好で腰を下ろす。
「――あんたたち、ここに来てからもう一年以上になるわよね?」
霊夢さんはそう切り出した。私たちが幻想郷に迷い込み、紅霧異変に首を突っ込んだのが去年の夏だから、確かにもう丸一年以上が経過している。
私たちが頷くと、霊夢さんは腕を組んで、率直に切り出した。
「今更だけど、確認しておくわ。――元の世界に帰るつもり、まだある?」
私たちは思わず顔を見合わせる。――帰れる? 八十年後の科学世紀の京都に?
突然そんなことを言われても、心の整理が追いつかない。――と同時に、そう問われて即座に「帰りたい」という言葉が出てこないほどに、この一年で自分がこの幻想郷での生活に馴染んでしまっていることに気付き、私は愕然とした。
私は――今は、帰りたいと強く思ってはいないのかもしれない。
「……帰れるの?」
蓮子はどう思っているのだろう、と私が考えると同時に、相棒が霊夢さんにそう問い返していた。霊夢さんはひとつ息を吐く。
「紅霧異変、春雪異変、そして今回の永夜異変。――そういえば萃香の起こした宴会騒ぎのときにも、あんたたちは宴会に居たわね。それも合わせれば四回。四回よ、この一年に」
「私たちが居合わせた異変ね」
「この幻想郷で起きた大規模な異変の全て、よ。その全部で、あんたたちは私が乗り込むより早く異変の首謀者のところに行ってる。萃香のときだって、私より先にあいつを見つけてたんでしょう?」
「ええ――」
「四回よ。二回までなら偶然だって魔理沙だか咲夜だかが言ってたけど、四回はもう偶然ではあり得ないでしょう。――あんたたち、本当に何者なのよ? 特にメリー、あんた」
びしっと私に指を突きつけて、霊夢さんは半眼で私を睨む。
「紫とそっくりなあんたが、毎回異変の中心地にいる。あんた、紫の何なの? 紫と一緒になって、何か企んでるんじゃないでしょうね?」
「ご、ごごご、誤解です、誤解!」
私は慌てて首を横に振る。霊夢さんはじろりと強く私を睨み、それからため息をついた。
「――そうなのよね。あんたには紫みたいな胡散臭さがない。解りやすい普通の人間」
「はあ……」
「でも、あんたたちが怪しいのは事実。で、あんたたちは未来から来たんでしょ? 私の知る限り、外の世界の未来から人間を連れて来る、そんなことができそうなのは紫ぐらい。だから紫に聞いてみたのよ、あんたたちのこと。あんたたちを元の未来の外に帰してやれるのかどうかも含めて」
話が戻って来た。「それで?」と蓮子が続きを促す。
「紫は、何も知らないって言ってたわ。少なくともあんたたちをこの世界に連れてきたのは自分の仕業じゃないって。まあ、紫の言うことだからどこまで信用できるか解らないけど」
――私は、幻想郷に迷い込んだきっかけと、春雪異変のときのことを思い出す。
私たちを幻想郷に導いた、菫子さんの部屋にあった虫入りの琥珀。
それを手にしていた妖怪の賢者は、私にそれを、幼少期の菫子さんに渡すように言った――。
私たちが幻想郷に迷い込んだこと、そして宇佐見菫子さんの謎に、妖怪の賢者はいったいどんな関わりを持っているというのだろう?
「で、紫はこうも言っていたわ。『いくら私でも、時間の境界を操るのは至難の業なのよ。まして八十年ともなれば、とてもとても』――」
「……ということは?」
「つまり、あんたたちを未来に帰す方法は、今のところ無いっていう報告」
がくっ、と蓮子が大げさにつんのめり、私は横で肩を竦めた。そんなことだろうと思った。
「まあ、単に紫が何かの理由であんたたちを帰したくないだけかもね。勘だけど」
「――妖怪の賢者は、私たちに何を求めているのかしら?」
「知らないわよ、そんなこと。あいつが何考えてるかなんて、私に聞かれても困るわ。ま、そういうわけだから、観念して幻想郷の住人になることね。――ああ、それと」
立ち上がりかけて、霊夢さんは不意に剣呑に目を細めて、私たちを睨んだ。
「里の人間として暮らしていくなら、それ以上の変な考えは起こさないこと」
「……というと?」
「人間以外のものになろうとするな、っていうことよ。――それじゃあね」
ひらひらと手を振って、霊夢さんは事務所を後にする。私たちはまた顔を見合わせた。
「……結局、帰れないみたいね。あーあ、本当に蓮子のせいで私の人生めちゃくちゃだわ」
「どっちかっていうと、大叔母さんのせいでしょ。――まあ、妖怪の賢者の気が変わることもあるかもしれないし、気長に構えましょ」
ごろりと畳の上に寝転んで、相棒は言う。帰れないと解っても、今更といえば今更なので、悲壮感も抱きようがない。一年という歳月は、私たちを幻想郷の色に染めるのに十分だった。もし今あの科学世紀に戻れば、文明の利器の数々に、素直に感動できるだろう。ちょっとしたタイムトラベラー気分が味わえるに違いない。――いや、そもそも今の私たちがタイムトラベラーなのだけれども。
「それに、この世界の秘密は、きっとまだまだ掘り尽くせないほどたくさんあるはずだわ」
「たとえば?」
「そうねえ。魔界とか地底とか、まだ行ったことのない世界があるし。龍神がいるっていう天界も、かしら。妖怪の山の奥にもまだ行ってないわね。河童や天狗の生態も気になるし、他にもまだまだ未確認の妖怪はたくさんいるでしょう。そして何より――月の都よ」
「月に行くの、まだ諦めてなかったの?」
「ねえメリー。永琳さんと輝夜さんがこの幻想郷に隠れ住んだのはいいとして、数十年前に鈴仙さんが月を脱走してきて永遠亭に転がり込んだ――この事実が示すことは何だと思う?」
「何、って……」
「数十年前には、もう博麗大結界は張られていたはずなのよ」
私は目をしばたたかせ、そしてひとつ唸る。――ということはだ。
「……鈴仙さんのいた月の都も、冥界と同じように、この幻想郷側の世界ってこと?」
「そうよ! 科学世紀の宇宙探査で観測された月は、決して月の全てではなかったんだわ。地球上にこの幻想郷が隠されているように、月面にも二十一世紀の科学が忘れた幻想の郷が存在していると考えるべきなのよ!」
がばりと身を起こして、相棒は楽しげにそう言った。
その瞳の輝きに引っ張り回されるのが、結局はいつもの私の日常であって。
おそらくそれは、この幻想郷でもこれから何度となく繰り返されるのだろう。
「ああ、そう考えるとワクワクしてきたわ。幻想郷から月へ行く方法を調べに、また永遠亭に潜り込もうかしら? 鈴仙さんの能力も物理学者としてまだまだ調べたいし――」
「はいはいそこまで。現実の問題を考えるわよ」
「現実?」
「晩ご飯」
ぐう、と蓮子のお腹が鳴った。蓮子は赤面して、「腹が減っては推理はできぬ」とうそぶく。
「よし、じゃあメリー、新しいところに食べに行きましょ」
「新しいところ?」
「新聞に出てたわ。夜雀の屋台。目にいいヤツメウナギで一杯やりましょ」
「ヤツメウナギってあの気持ち悪い生き物でしょ? ……まあ、いいけど」
そんなことを言い合いながら、私たちは事務所を出て、夜へ向かう幻想郷へ繰り出していく。
空に昇りはじめた月が、私たちと幻想郷とを、変わらずに見つめていた。
【第4章 永夜抄編――了】
「……話は終わりかしら?」
「ええ、ご静聴ありがとうございました」
「そう。――それで貴方は、私にその話を聞かせることで、何を求めているのかしら?」
目を細め、永琳さんはそう訊ねる。その視線の剣呑さに、私は身を竦めるけれど、相棒は相変わらず意に介した風もなく、「さて」と肩を竦めた。
「そうですね。求めているとすれば――この推理を根底から粉砕する真実ですかね」
その答えに、永琳さんは眉を寄せた。
「貴方は、自分の考えを私に否定してもらうために長々と語ったというの?」
「所詮、私の考えたことは限られた断片的な情報から組み立てた推論です。これが唯一無二の正解だなどと自惚れるつもりはありませんわ。だから――私が求めるのは、私の想像も及ばなかったような、これ以上の真相です」
「――――」
「もちろん、それがそちらの語れるものであるならば、ですが――」
「……それなら、私から言うことは何もないわね」
腕を組んで、永琳さんは息を吐き出す。
「それとも、ここで私がその話を否定しなければ、貴方はこれを輝夜に吹聴するのかしら?」
「論破していただけるなら黙って引き下がりますし、そうでなくてもデタラメを姫様に吹き込むことまかりならぬと仰せなら、その通りに。――仮に貴方たちが完全な不老不死でないのだとしても、終わりが来るのは私たちの寿命などより遥かに先のことなのでしょうから」
「終わりなど来ないわよ。私と輝夜には、永遠に」
「では、そういうことにしておきましょう。――ありがとうございました」
ぺこりと一礼して、相棒は私を促して立ち上がる。私も慌てて永琳さんに頭を下げて立ち上がった。――と、部屋を出ようとした相棒の背中を、永琳さんが呼び止める。
「宇佐見蓮子さんだったわね」
「はい、なんでしょう?」
「貴方――不老不死になる気はない?」
どこか、面白がるように、永琳さんはそう言った。
その言葉に、相棒はゆっくりと振り返り――帽子を、目深に被り直した。
「たいへん、魅力的な申し出ですが――今のところは、ご遠慮しておきますわ」
私は思わず目を見開く。――いつか、相棒と交わした会話を思い出したから。
『不老不死の薬? もちろん、使うわよ』
かつて、不老不死について語ったとき、相棒は私の問いにそう答えたのに――。
「あら、どうして? 貴方、地上の人間にしておくには勿体ないわ」
「これはこれは、過分なお褒めの言葉、恐縮です。――ですが」
と、相棒は不意に、私の肩を抱き寄せる。突然蓮子の顔が近付いて、私は自分の顔が赤くなるのを感じた。ちょっと蓮子、そんな急に何を――。
「永遠を過ごすなら、私はメリーと共にでなくては」
「ちょ、蓮子――」
「メリー、不老不死になりたい?」
私の目を覗きこんで、相棒は問う。私は自分が赤面していることを悟られたくなくて、口を閉ざして顔を伏せ――それから相棒の問いかけが頭に浸透してきて。
不老不死になりたいかと問われれば――答えは、ノーだ。
私は、永遠を受け入れられるほどに、狂ってはいない。そう思う。
だから私は、ゆっくりと首を横に振る。
「――というわけですわ」
「そう。……気が向いたらいつでも、私に声を掛けて頂戴。私と輝夜で良ければ、永遠に付き合ってあげられるわ」
「覚えておきますわ」
我が相棒はどこまでも平然とそう笑って答え、永琳さんは私たちに背を向ける。
――何でもいいけど、そろそろ放してくれないかしら。
私はぐるぐると、とりとめなく回る思考の中で、そんなことを考えていた。
◇
――ともかく。
今回の相棒の誇大妄想を一言で説明すれば、これは心中の物語だったのだということになる。
生と死を拒絶した月に暮らす者が、死ぬために不老不死となった。月では死ぬことさえできないから、地上でかりそめの永遠とともに、果てしない未来にある魂の摩滅を目指す。
永琳さんと輝夜さんは、そんなあまりにも気の長い心中の真っ最中なのだと。
あまりにも逆説的すぎるその推理が、果たして真実の一端を掠めていたのか。
それとも、相棒の過剰な妄想力が生み出した、推理小説的幻想に過ぎないのか。
――永琳さんが何も語らない以上、それは私たちには解りようもないことだった。
◇
永琳さんとの話を終えたあと、私たちはてゐさんとイナバたちに捕まって、外出から戻ってきた輝夜さんたちとお月見をすることになった。
「あらあら、いつかの人間。永琳に改造でもされた?」
「何ですか改造って。姫様は神社に行ってらっしゃったとか?」
「ええ、ちょっとした楽しい遊びに、この前の人間を誘ったの」
「遊び?」
「そのうち解るわ。それまで私たちはお月見を楽しみましょう」
そんなわけで、永遠亭の縁側に私たちは集まる。鈴仙さんたちが作ったらしいお団子を並べ、庭で戯れるイナバたちとともに満月を見上げた。
「蓮子、あんまり満月を見上げない方がいいんじゃなかった? また目が見えなくなっても知らないわよ」
「そのときはまたメリーに介護してもらうわ。――ん、お団子美味し」
「私はもう嫌よ、蓮子の介護をするのは」
「あらひどい。老後は切実な問題よ?」
「何十年後の話よ。っていうか私はおばあちゃんになっても蓮子から離れられないの?」
「寂しいこと言わないの、メリーってば。どこにも行かないでよ」
「人をどこにも行く宛てのない世界に連れてきておいて、全く」
嘆息する私に、蓮子が猫のような笑みを浮かべる。「仲が良いねえ」とてゐさんが笑い、鈴仙さんは微かに口を尖らせて黙している。彼女だけはいつも通り不機嫌そうだ。
「れいせーん、不景気な顔してないで遊ぼうぞー」
「不景気で悪かったわね。てゆかあんたたち、私が準備してる間もずっと遊び呆けてたでしょうが。全く……」
「あら鈴仙、そんなに月に帰りたかった?」
「え? あ、姫様、いえ、そういうわけでは……」
「残念だけど、帰さないわよ」
屋敷の奧から、永琳さんが姿を現す。永琳さんは私たちをちらりと一瞥したあと、輝夜さんの隣に腰を下ろして、鈴仙さんを見やった。
「ウドンゲを帰したら、雑用係がいなくなるもの。誰が炊事洗濯掃除をするの?」
「お、お師匠様ぁ」
「そもそも、屋敷が穢れだらけになったのも元を質せば鈴仙のせいよね?」
「ひ、姫様まで」
「そう。だから責任をとってきりきり働くこと。それとも、薬の実験台の方がいいかしら?」
「……はいぃ、働かせていただきます」
がっくりと肩を落とす鈴仙さんに、永琳さんと輝夜さん、てゐさんが笑う。――まあ、何はともあれ、楽しそうで何より……なのだろうか。
――と、庭で跳ねていたイナバたちが不意に騒ぎ始めた。私たちもそちらへ視線を向けると、屋敷を囲む塀の向こう側、竹林の闇の中に、色とりどりの光が飛び交っている。あれは――弾幕ごっこの光ではないか。しかし、誰が?
「あら、始まったみたいね」
輝夜さんがぽんと手を叩いて楽しげに言った。――炎めいた赤い光が明滅する。ということは、あれは妹紅さんか。私は思わず輝夜さんを振り向く。まさか、霊夢さんたちをけしかけて妹紅さんと戦わせているのか?
「もこたんが退治されるのを、ゆっくりお団子食べながら見物といきましょう」
どうやらそういうことらしい。私は相棒と顔を見合わせるが、弾幕ごっこの中に私たちが飛び込んでいっても、やれることはない。流れ弾に当たって怪我をするのがオチである。
「蓮子、突っ込んで行ったりしないでよ」
「しないわよ。犯人はここにいるんだし、安全圏から見物だけするわ。――妹紅なら、少なくとも殺されちゃうってことはないわけだしね」
いいのかそれで、とは思うが、それ以上できることもない。私もお団子を食べながら、竹林の合間に見え隠れする光の応酬に目を細めた。
「地上もなかなか、綺麗ね、永琳」
「……そうね」
横目で見ると、輝夜さんが永琳さんに身体を預けて、そう囁いていた。永琳さんはその肩を抱いて、慈しむように輝夜さんの長い黒髪を梳いている。その横顔は、ふたりとも幸せそうだった。この地上で、永遠を分かち合ったふたりは、どこまでも自然に寄り添っている。
それなら、この物語の真の姿がどうであれ、全てはそれでいいのかもしれない。
少なくとも、輝夜さんの幸せそうな横顔に、私が挟める言葉など、何ひとつなかったから。
◇
お月見と弾幕ごっこ見物が終わり、永遠亭を辞去したあと、私たちは妹紅さんと合流して、あばら屋へ戻った。妹紅さんはボロボロの格好だったが、平気そうな顔でぶつくさ言っていた。
「ああ、あれってやっぱり霊夢ちゃんたちだったの」
「ああ、輝夜の奴にそそのかされて、肝試しに来たんだとさ」
私たちが永遠亭から見た光の饗宴は、やっぱりそういうことだったらしい。
「まあ、私は死なないから痛めつけられても平気だけどな。……正直、仕事を邪魔されて気が立ってる慧音を落ち着かせる方が大変だったぞ」
眠る慧音さんを見下ろしながら、妹紅さんはため息をつく。布団ですやすやと寝息をたてる慧音さんは、既に角も尻尾も消えた人間の姿だ。
「しかし――竹林の外には面白い連中がいるもんだな」
腕を組んで、妹紅さんは蓮子をちらりと見ながらそう呟く。
「お前たちといい、こうも怖がられないと調子が狂う。流浪の千三百年はなんだったんだ?」
「それだけ人間が進歩したってことじゃない?」
「進歩なのかねえ。死なない人間ばかりじゃ世界が永遠の一回休みと同じだぞ」
「死ぬ人間、死なない人間。死ぬ妖怪、死なない妖怪。どれもいるのが幻想郷。死なない友達が増えるのも、妹紅には悪くないんじゃない?」
「――寂しいこと言うなよ。お前たちも慧音も、死ぬ人間だろう?」
「あら、これは失礼」
目を細めた妹紅さんに、蓮子はおどけて頭を下げる。妹紅さんは立ち上がり、ひとつ伸びをして、朝になろうとしている竹林を窓から覗いた。
「この千三百年、死ねるものならさっさと死にたいって、ずっとそう思って来たけど――案外、生きてるのも悪くないかも、しれないな」
◇
――私たちの見届けた〝永夜異変〟の物語は、これで全てである。
だからこの記録もここで終わりにすべきなのかもしれないが――最後に、私たち自身の話を少しだけ記しておこう。
永遠亭でのお月見の数日後。夕刻になって、そろそろ事務所を閉めようかと思っていた頃に、珍しい来客があった。
離れの玄関を開けると、そこにいたのは里ではあまり見かけない、紅白の巫女さんである。
「霊夢ちゃん?」
「お邪魔するわよ。――あんたたち、ここで何やってんの?」
「ここは世界の秘密を解き明かす私たち秘封倶楽部の前線基地よ」
「いつものことだけど、外来人の考えることはよく解らないわね」
呆れたように言いながら、霊夢さんはずかずかと離れに上がり込み、勝手に座布団に腰を下ろした。私たちも彼女に向き合う格好で腰を下ろす。
「――あんたたち、ここに来てからもう一年以上になるわよね?」
霊夢さんはそう切り出した。私たちが幻想郷に迷い込み、紅霧異変に首を突っ込んだのが去年の夏だから、確かにもう丸一年以上が経過している。
私たちが頷くと、霊夢さんは腕を組んで、率直に切り出した。
「今更だけど、確認しておくわ。――元の世界に帰るつもり、まだある?」
私たちは思わず顔を見合わせる。――帰れる? 八十年後の科学世紀の京都に?
突然そんなことを言われても、心の整理が追いつかない。――と同時に、そう問われて即座に「帰りたい」という言葉が出てこないほどに、この一年で自分がこの幻想郷での生活に馴染んでしまっていることに気付き、私は愕然とした。
私は――今は、帰りたいと強く思ってはいないのかもしれない。
「……帰れるの?」
蓮子はどう思っているのだろう、と私が考えると同時に、相棒が霊夢さんにそう問い返していた。霊夢さんはひとつ息を吐く。
「紅霧異変、春雪異変、そして今回の永夜異変。――そういえば萃香の起こした宴会騒ぎのときにも、あんたたちは宴会に居たわね。それも合わせれば四回。四回よ、この一年に」
「私たちが居合わせた異変ね」
「この幻想郷で起きた大規模な異変の全て、よ。その全部で、あんたたちは私が乗り込むより早く異変の首謀者のところに行ってる。萃香のときだって、私より先にあいつを見つけてたんでしょう?」
「ええ――」
「四回よ。二回までなら偶然だって魔理沙だか咲夜だかが言ってたけど、四回はもう偶然ではあり得ないでしょう。――あんたたち、本当に何者なのよ? 特にメリー、あんた」
びしっと私に指を突きつけて、霊夢さんは半眼で私を睨む。
「紫とそっくりなあんたが、毎回異変の中心地にいる。あんた、紫の何なの? 紫と一緒になって、何か企んでるんじゃないでしょうね?」
「ご、ごごご、誤解です、誤解!」
私は慌てて首を横に振る。霊夢さんはじろりと強く私を睨み、それからため息をついた。
「――そうなのよね。あんたには紫みたいな胡散臭さがない。解りやすい普通の人間」
「はあ……」
「でも、あんたたちが怪しいのは事実。で、あんたたちは未来から来たんでしょ? 私の知る限り、外の世界の未来から人間を連れて来る、そんなことができそうなのは紫ぐらい。だから紫に聞いてみたのよ、あんたたちのこと。あんたたちを元の未来の外に帰してやれるのかどうかも含めて」
話が戻って来た。「それで?」と蓮子が続きを促す。
「紫は、何も知らないって言ってたわ。少なくともあんたたちをこの世界に連れてきたのは自分の仕業じゃないって。まあ、紫の言うことだからどこまで信用できるか解らないけど」
――私は、幻想郷に迷い込んだきっかけと、春雪異変のときのことを思い出す。
私たちを幻想郷に導いた、菫子さんの部屋にあった虫入りの琥珀。
それを手にしていた妖怪の賢者は、私にそれを、幼少期の菫子さんに渡すように言った――。
私たちが幻想郷に迷い込んだこと、そして宇佐見菫子さんの謎に、妖怪の賢者はいったいどんな関わりを持っているというのだろう?
「で、紫はこうも言っていたわ。『いくら私でも、時間の境界を操るのは至難の業なのよ。まして八十年ともなれば、とてもとても』――」
「……ということは?」
「つまり、あんたたちを未来に帰す方法は、今のところ無いっていう報告」
がくっ、と蓮子が大げさにつんのめり、私は横で肩を竦めた。そんなことだろうと思った。
「まあ、単に紫が何かの理由であんたたちを帰したくないだけかもね。勘だけど」
「――妖怪の賢者は、私たちに何を求めているのかしら?」
「知らないわよ、そんなこと。あいつが何考えてるかなんて、私に聞かれても困るわ。ま、そういうわけだから、観念して幻想郷の住人になることね。――ああ、それと」
立ち上がりかけて、霊夢さんは不意に剣呑に目を細めて、私たちを睨んだ。
「里の人間として暮らしていくなら、それ以上の変な考えは起こさないこと」
「……というと?」
「人間以外のものになろうとするな、っていうことよ。――それじゃあね」
ひらひらと手を振って、霊夢さんは事務所を後にする。私たちはまた顔を見合わせた。
「……結局、帰れないみたいね。あーあ、本当に蓮子のせいで私の人生めちゃくちゃだわ」
「どっちかっていうと、大叔母さんのせいでしょ。――まあ、妖怪の賢者の気が変わることもあるかもしれないし、気長に構えましょ」
ごろりと畳の上に寝転んで、相棒は言う。帰れないと解っても、今更といえば今更なので、悲壮感も抱きようがない。一年という歳月は、私たちを幻想郷の色に染めるのに十分だった。もし今あの科学世紀に戻れば、文明の利器の数々に、素直に感動できるだろう。ちょっとしたタイムトラベラー気分が味わえるに違いない。――いや、そもそも今の私たちがタイムトラベラーなのだけれども。
「それに、この世界の秘密は、きっとまだまだ掘り尽くせないほどたくさんあるはずだわ」
「たとえば?」
「そうねえ。魔界とか地底とか、まだ行ったことのない世界があるし。龍神がいるっていう天界も、かしら。妖怪の山の奥にもまだ行ってないわね。河童や天狗の生態も気になるし、他にもまだまだ未確認の妖怪はたくさんいるでしょう。そして何より――月の都よ」
「月に行くの、まだ諦めてなかったの?」
「ねえメリー。永琳さんと輝夜さんがこの幻想郷に隠れ住んだのはいいとして、数十年前に鈴仙さんが月を脱走してきて永遠亭に転がり込んだ――この事実が示すことは何だと思う?」
「何、って……」
「数十年前には、もう博麗大結界は張られていたはずなのよ」
私は目をしばたたかせ、そしてひとつ唸る。――ということはだ。
「……鈴仙さんのいた月の都も、冥界と同じように、この幻想郷側の世界ってこと?」
「そうよ! 科学世紀の宇宙探査で観測された月は、決して月の全てではなかったんだわ。地球上にこの幻想郷が隠されているように、月面にも二十一世紀の科学が忘れた幻想の郷が存在していると考えるべきなのよ!」
がばりと身を起こして、相棒は楽しげにそう言った。
その瞳の輝きに引っ張り回されるのが、結局はいつもの私の日常であって。
おそらくそれは、この幻想郷でもこれから何度となく繰り返されるのだろう。
「ああ、そう考えるとワクワクしてきたわ。幻想郷から月へ行く方法を調べに、また永遠亭に潜り込もうかしら? 鈴仙さんの能力も物理学者としてまだまだ調べたいし――」
「はいはいそこまで。現実の問題を考えるわよ」
「現実?」
「晩ご飯」
ぐう、と蓮子のお腹が鳴った。蓮子は赤面して、「腹が減っては推理はできぬ」とうそぶく。
「よし、じゃあメリー、新しいところに食べに行きましょ」
「新しいところ?」
「新聞に出てたわ。夜雀の屋台。目にいいヤツメウナギで一杯やりましょ」
「ヤツメウナギってあの気持ち悪い生き物でしょ? ……まあ、いいけど」
そんなことを言い合いながら、私たちは事務所を出て、夜へ向かう幻想郷へ繰り出していく。
空に昇りはじめた月が、私たちと幻想郷とを、変わらずに見つめていた。
【第4章 永夜抄編――了】
第4章 永夜抄編 一覧
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【あとがき】
毎度、ここまでお読みいただきありがとうございました。
作者の浅木原忍です。
今回の永琳と輝夜、蓬莱の薬に関する謎解きは、実は過去作でもちらほら触れています。
長編『うみょんげ!』(東方創想話で公開中)や、凋叶棕合同に寄稿した短編「********」などですね。
ただ、それを使い回すだけではアレなので、今回さらにもう一捻り、いやふた捻り入れました。
月絡みの設定や描写は何しろ公式でコロコロ変わるので、これもまた蓮子の言う通り与太話のひとつとしてお楽しみ頂ければ幸いです。
次は花映塚編です。8月中に連載開始したいですが予定は未定。
どうぞ、次も蓮子の誇大妄想にお付き合いください。
霊夢に疑われる秘封倶楽部。まあ当然だよなぁ…
霊夢の人間以外になるなと言うのは言葉以上の意味があるのではないかと勘ぐってしまいますね。
次の花映塚で蓮子が映姫様に説教されないかが心配です。
素敵な作品をありがとうございました!蓮子の不調から始まって、どうなるかハラハラしながら読ませて頂いておりましたが、今回も異変解釈の通説を打ち破るまさかの推理、とても面白かったです♪
エピローグでの、不老不死の誘いを断る蓮子、永琳に寄り添う輝夜、妹紅の心境の変化のシーンは、胸を打つものがあってちょっとウルッと来てしまいました
そしてまだまだ元の世界に帰れなさそうな蓮メリ・・・花映塚編も楽しみにお待ち致しております!
永夜抄編完結お疲れ様です。今回も楽しませて頂きました。
これの配布は秋期例大祭かな
おつかれさまです!!
いつも楽しく拝読させていただいております。
今回の永夜抄編完結お疲れ様です。
一度読み始めると、どこで切りをつけたいいのかわからなくなるくらい物語に引き込まれてしまいます
世界観についても、幻想郷に秘封倶楽部の二人がいることによるある種のズレも、上手く作りこまれていて毎度感服しております
今回の永夜抄編では、不老不死の薬を服用した蓬莱人の解釈、
己の魂を依処としているその存在における魂は、不変であるか、不滅であるか、それとも・・・?
自分の中にあった解釈を悉くいい意味でぶち壊してくれて、自分の中で考察も新たに広げることが出来そうです。
もうなんと言葉を並べたらいいのか・・・とにかく読んでいて楽しいです!
ところで、本日7月17日で、こちら秘封探偵事務所連載開始から一周年のようですね。
これからの物語に続く花映塚編も首を長くして待ってます!
永夜抄完結お疲れさまでした。今作も見所満載、蓮子の想像を超える名推理、素晴らしかったです。
次回の花映塚編も楽しみです。
お疲れさまでした!
少しづつ魂が劣化してると言う事は姫様の能力(自分は一瞬を引き伸ばしたり逆の事をする能力だと解釈してる)で自殺できるんだろうか?
凄い面白かったです。永夜抄は考察のしがいご沢山ある謎に満ちた異変なので、そうゆう考え方もあるのかと思いました。
That’s an innitlegelt answer to a difficult question xxx
永夜抄編お疲れ様でした~今回も頭が回らず混乱してましたが面白い作品でした!
読んでいて凄くワクワクします。蓮子とメリーの冒険がこんな濃密なストーリーで楽しめるなんて、作者様には感謝感謝です。なんというか、自分の中でこうだったらいいなという秘封倶楽部そのものなんですよね。この先の話も楽しみに読ませていただきます。
姫は不老不死を願って薬を飲んだら不老不死でなくなったといつことか
これまた予想外な結末をありがとうございました。
いまさらながらですが、「うみょんげ!」と合わせて読ませていただきました。
次の展開が気になって、一気に通読してしまいました。
それにしても、ものすごい構成力。
まさか永夜異変の真相がこんな形でまとめられるとは思いもよりませんでした。
そしてちりばめられた原作のセリフが粋です。
崇めさせてもらっていいでしょうか?w
永夜抄フェチなもので、いきなりこの章から読み始めてしまいましたが、
他の作品も読ませていただきます。
霊夢の最後の一言が、2つの作品にまたがって重いですね・・・。
今回も楽しく読ませていただきました。
予想だにしないような展開の数々に今回も楽しませていただきました。
とくに、前提を覆しての蓮子の推理には驚くばかりでした。
たまに挟まる蓮メリ要素にもニヤニヤできて楽しかったです。
素晴らしい作品をありがとうございました!