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2XXX年の幻想少女第1章 幻影都市の亡霊   幻影都市の亡霊 第5話

所属カテゴリー: 2XXX年の幻想少女第1章 幻影都市の亡霊

公開日:2016年11月24日 / 最終更新日:2016年11月24日

幻影都市の亡霊 第5話
 灯りはしばらくまっすぐ続き、霊夢は間もなく屋敷のおかしさに気付いた。外観からはあり得ないほどの距離を歩かされている。時間までは認識できなかったが、ここでの一分が外での一時間、下手をすると一日だなんてことも起こり得るのかもしれない。
「これだけ広いと、掃除なんか大変でしょうね」
 内心の疑念を誤魔化すため、世間話を投げかける。門番は立ち止まることなく霊夢の質問に答えてくれた。
「屋敷の道順は魔法で制御されていて、メイドの姿をした可愛らしい妖精や、小間使いの服を着た厳つい顔の妖精は一人ずつ厳格に持ち場を決められているの。でも妖精なんて覚えた端から忘れていくのが得意技みたいなものでしょう? たまに覚えの良いメイドもいるけれどしばしば迷子になってしまう。紅美鈴という名の従者がある程度は回収したり、粘り強く言い聞かせたりするのだけど、どうしても隅々までには手が及ばない。いよいよ手付かずの場所が増えていくと、最終手段が発動するの。屋敷中に風を吹かせて塵芥を一気に追い払うのよ。ただし非常に手間のかかる魔法だからそうそう連続では使えないらしいけど。家具や調度品を吹き飛ばさず塵芥だけを絶妙に追い出す風って確かに、少し考えるだけで気を遣いそうって分かるわよね」
 外から見た限りでは、広大な庭は隅々まで手入れが行き届いており、屋敷も蔦がかかっているものの寂れた様子はなく、威厳を感じさせる佇まいだと思っていたのだが、内情はあまり芳しくないらしい。
「あまりに不便だから一度具申したことがあるのよ。空間の捻れを修復してもっと分かりやすくするべきじゃないかって。そうしたらあのレディと来たら酷くおかんむりで、頭ごなしに怒鳴りつけられたの。あとから美鈴に聞いた話だと、これはある人間が生きた証であるからどんなに不便でも残し続けているんだって。化け物だらけのこの屋敷で人間がそこまでの印象を残すなんて凄いことよね。あるいは人間だからこそ、か」
 門番の実感を霊夢は理解することができなかった。紅魔館の住人に限らず、妖怪は人間を下に見る傾向がある癖に、時々過度な評価をくだしたり、怖いくらいに寵愛したりするらしい。博麗の巫女も過去には妖怪と共闘した例がいくつもあり、信じ難いことだが情を交わし合った例もあるらしい。これまであまり実感が湧かなかったのだけど、人間であることに思いを馳せる門番の姿を見ているとあり得ることのように思えてくる。
「さて、目的地に着いたみたい」話をしている間にいつの間にか灯りが途切れ、下へ向かう階段が現れていた。「つまりパチュリー様のほうでも貴方に用事があるようね。あるいはその奥にいる当主様か」
 霊魂のような光がふわふわと浮いており、誘うように階段の奥へと飛んでいく。光を追いかけることしばし、百段近くも下っただろうか。ようやく階段が終わり、入口にも劣らぬ大仰な両開きの扉が現れる。扉の上に備え付けられたプレートには霊夢の読めない文字で何事かが書かれていた。
「ここは全ての知識が眠る場所、と刻まれているらしいわ。ラテン語らしいけど、わたしは日本語以外ちっとも読めないのよね」
 日本というのはかつて郷の外に存在したという国の名前だ。昔は自由とまではいかないにしても限定的なものの行き来があったらしい。だがずっと前に繋がりは途切れてしまったそうだ。日本が滅んでしまったとも、郷が成り立ちを変えたため繋がりが切れてしまったとも言われているが、その名残りは未だに郷のあらゆる場所に残っている。
「門番さんは日本に行ったことってあるの?」
 日本という国にさして思い入れがあるわけではない。ただ郷を構成する文化や世界観の根っこに位置しているのだから、好奇心がないわけではなかった。
「エリー」
「ん、エリーって何のことですか?」
「名前よ、わたしの名前。門番さんだなんて呼ばれるの、なんだかむず痒いもの」
「ああ、確かにそうかも……そう言えばこちらも名乗ってなかったわね。博麗霊夢、といっても名前を継いだだけで昔かつての霊夢じゃないんだけど」
「それくらい分かるわよ。ただの人間ならば百年ぽっちも生きられるわけがないんだから……さておき、日本に行ったことがあると聞かれれば、おそらくないと思うのよね。ただ、かつて日本の学校に通っていたという朧気な感覚があるの。妖怪になる前は霊夢のような普通の人間だったのかも。ただ、昔のことってどうしても忘れちゃうから」
 妖精の忘れっぽさは言われるまでもないが、妖怪も生まれから今日までのことを全て覚えているわけではない。どういう仕組みかは知らないが、約六十年に一度の周期で記憶の整頓が行われるのだ。
 遠子が言うには、妖怪の記憶は御阿礼の子と近しいところがあるらしい。全てを覚えておくには容量が大き過ぎるから重複する記憶を整理し、あるいは圧縮して奥の方へとしまう。求聞持の法はどんなに遠くへしまった記憶でも必ず辿り着けるよう、索引を付けて管理しているのではないかというのが彼女の仮説だった。妖怪には記憶に索引をつける方法がないから、データとしては存在しても記憶を上手く取り出せないのではないか。
 中には特権的に記憶を留め続ける妖怪もいる。それについては稗田も知らない未知の理屈が存在するのか、あるいは何らかの条件を満たせば周期にも理屈にも縛られなくなるのかもしれないという見解に留まっている。遠子の機嫌が目に見えて悪くなったので、霊夢はそれ以上のことを突っ込んで訊けなかったのだ。
「全ての知識が眠るという文句が真実ならば、ここでいつか見つけられるかもしれないけどね」それならば探してみれば良いのではという言葉は、開け放たれた扉の先にある光景を見て喉の奥に消えた。視界を覆い尽くす書棚はあまりにも圧倒的で、ここから何かを探せだなんて、砂場に落とした砂粒を探せと言うようなものだったからだ。「さて、お迎えがやって来たみたいね」
「案内、ご苦労様です」お迎えの姿なんて見当たらないと思った矢先、真横から門番とは異なる声がした。慌てて振り向くと背中に黒い羽根を生やした少女が立っており、霊夢の顔を見て悪戯っぽい笑みを浮かべるのだった。「あとはわたしが案内しますからエリーさんは引き続き正門の番をお願いします。最近は思慮のない奴らが館の周りをぶんぶん飛んでいるし、おまけに妙な霧は立ちこめるわで、誰彼通すわけにもいかなくなっていて。エリーさんが番に立ってくれるので本当に助かってます」
「いやー、わたしがやってるのは単なる門番ごっこだから」
 あの勝負をごっこと言われれば立つ瀬もないのだが、弾幕決闘とはおしなべてごっこであると思い直し、小さく息を吐くに留めた。するとエリーは霊夢の肩をぽんぽんと、軽く二度叩く。
「健闘を祈るよ、全てが上手く収まると良いね。そうすればわたしも気兼ねなく休めるから」
「まあ、任せておいて頂戴」
 正直なところあまり自信はなかったが、勝者になってしまったからには弱々しいところを見せられなかった。それに新しく現れた黒羽根の少女が先程から目聡くこちらを見ていることにも気付いていた。だから尚更、余裕のある振りをしなければならない。
「また機会があったら仕合おう。今度は力試しでなくきちんとした弾幕決闘でね」
 エリーほどの強さを持つ相手とそうそう決闘なんてしたくないのだが、気持ちとは裏腹に大きく頷いていた。すると不思議な高揚感が体を満たし、気持ちが塗り替えられていく。自分はぎりぎりの戦いを楽しいと感じていたのだろうか。
 そんな自問自答はエリーが背を向けることで断ち切られ、後には霊夢と黒羽根の少女だけが残された。彼女は二人きりになると露骨に距離を詰め、霊夢の顔をまじまじと観察する。頭の上から生えている突起物がぱたぱたとはためき、角ではなく羽根であることを言葉なく示す。稗田の資料に記載されていた通りだった。
 鳥ならばこんな場所に羽根など生やさないが、妖怪のそれは魔力や妖力の器官としてあらゆる場所に発現する。突拍子のない場所に生えてくることも往々にしてあるのだ。霊夢の見たところ頭の羽根は背中のそれよりも強力な魔力の器官であり、思考と直結しているのならば初等の魔法程度は詠唱なしで発動するのかもしれない。
「どうやらわたしのことをある程度は調べてきたみたいですね。かつての霊夢さんとは違って少しは思慮分別もあるようで、少しだけ安心しました」
 そして彼女は最初に霊夢を名乗った博麗の巫女をよく覚えているらしい。郷に住む妖怪たちと成り立ちが異なるためか、それとも図書館の知識を身にまとっているのか。どちらにしろエリーが見せたような闘気を霊夢に向けてくることはないようだった。
「エリーさんが通したのですから改めて試すようなことはしません。パチュリー様に命じられれば手も出しますが」
「わたしも無益な争いをするつもりはないわ。西の里を覆う霧の原因を見つけ、解決することができるならそれで良いの」
「だからかつて霧の異変を起こした紅魔館にやってきたわけですね。記憶が失われ続けるこの郷で七百年近くも前の出来事をよくぞ、そこまで調べられたものです。稗田の書庫を頼りましたか? それとも当時を記憶している妖怪に話を聞きましたか?」
「稗田の書庫よ。当時を記憶している妖怪に心当たりがないわけではなかったけど」霊夢は魔法の森に居を構える金髪の魔法使いを思い浮かべる。彼女は明言したことこそないが、最初に霊夢を名乗った博麗と同世代であることを匂わせることが何度かあった。それなら博麗の術だって目の当たりにしているはずなのに、肝心なことはほとんど教えてくれなかった。「そういうのは偏屈だって話が決まってるもの」
「確かにそうですね」黒羽根の少女は思い当たる節があるのか、可笑しそうにくすくすと笑う。「パチュリー様も年を経るごとに気難しくなるばかりですよ」
 それは霊夢にとってあまり良い話ではなかった。パチュリー・ノーレッジはこれから霊夢が交渉を仕掛ける相手である。彼女が気難しがりなら、ろくな言葉を交わすことなく門前払いを食らいかねない。
「心配そうな顔をしなくても大丈夫ですよ。パチュリー様は貴方を連れてこいと命じられました。無碍にするつもりはないのでしょう」
「それならば門番に話をつけてくれても良かったのに」
「あそこを突破できない程度の実力なら要らないと考えたのでしょうね」
 パチュリー・ノーレッジは何らかの荒事を押し付けるつもりなのかもしれない。黒羽根の少女の話を聞いて霊夢はそんなことを考えた。そうでなければ力を測るような真似はしないだろう。厄介なことに巻き込まれないと良いけれど、そうはいかないだろうと悪いことばかり当たる勘が訴えていた。
 渋い顔を表に出してしまったのだろう。黒羽根の少女は霊夢に深々と頭を下げる。
「試されて気分を害したならば、代わりに謝りますよ」
「別に怒ってるわけじゃないの。面倒なことになりそうだなと思っただけ」
「人間の身でここに来た時点でもう最悪に面倒ですよ。だからせめて最悪を楽しみましょう」黒羽根の少女は無邪気な笑顔とともに気の詰まるようなことを言う。「では我が主の元へ向かうとしましょう」
 黒羽根の少女は霊夢に背を向け……すぐにくるりと向き直る。
「申し遅れました。わたしはこの地下図書館で司書を勤める守護天使のソフィーと言います。屋敷の皆は小悪魔と呼ぶのですが……まあ、お好きなほうでどうぞ」
 黒い羽根に暗めの色で統一した服装から天使を連想することはできそうになかった。だが小さいと称するのも抵抗がある。霊夢より頭一つほど大きいし、胸回りも腰つきも里に暮らす大人の女性と比べてなんら遜色はない。
「すぐに決める必要はありません。そもそも名前なんて個人を特定する必要がなければ覚えなくても良いですし、使う意味もありません。それ、とか彼女、とかそんな使い捨ての代名詞でも良いわけです」
「うーん、じゃあ小悪魔で良いかな」ソフィーと呼ぶのが礼儀としては正しいのかもしれないが、どうしてもしっくり来なかった。「嫌ならやめるけれど」
「お好きなほうでと言ったのですから文句は言いません。それに……霊夢さんには小悪魔と呼んでもらえるほうが嬉しいかもしれません」
 それはかつて霊夢を名乗った博麗との思い出があるからだろうか。ソフィーがしっくり来ないのも、もしかしたら共時性のなせる技なのかもしれない。
「それでは行きましょうか。大丈夫ですよ、パチュリー様は偏屈極まりないですが、魔法使いとして理屈に殉ずるお方ですから」
 それはつまり彼女にれっきとした理屈を突きつけなければならないということだ。死んだはずの従者が主を告発しただなんて性質の悪い話に、果たして理屈を見つけてくれるのだろうか。
 しばし考えたのち、霊夢は悩ましげな結論に至った。
 結局のところ、出たとこ勝負しかない。怒らせた時の対策が万全であることだけを頼りに、霊夢は魔法使いの元へ向かうのだった。


 既に大分進んだはずなのだが、書架だけが並ぶ光景には一片の変化もない。この中から目的のものを見つけ出すなど到底不可能だと思えるほど、ただただ同じ光景が続き、目印は皆無である。先導して進む小悪魔が正しい道を案内しているのか、いよいよ疑問に思えてきた。
「あと少しで着きますよ」小悪魔はそんな霊夢の心を読んだように声をかけてきた。「いつまでも同じ光景ばかりでは不安になりますよね。しばしのご辛抱を」
 あまりにも容易く宥められ、恥ずかしさで声も出ない。説明もなしで全く同じに見える光景を延々と見せられたら苛立つのも当然だとは思うのだが、妖怪退治を生業の一つにするのだから相手の上を行く反応を示したかった。
「すいません、からかったわけじゃないんですよ。わたしの記憶にある霊夢さんは正直なところ堪え性がないにも等しい方でしたから。いつ苛立ち紛れに攻撃を仕掛けられないか心配していたんです」
 今にも名前が残るほどの巫女だから冷静沈着なのかと思っていたのだが、話を聞く限りだとそうでもないらしい。俄然興味が湧いてしまい、霊夢は小悪魔に質問を飛ばす。
「わたしじゃない霊夢ってどんな人だったの?」
「うーん、わたしはそこまで深い付き合いをしていなかったですからね。たまに彼女のほうから訪ねてくるくらいで……まあ、おっかない人でしたよ。レミリア様が霧で太陽を隠したあの事件でも真正面から乗り込んできて、正しく問答無用で館の住人をばったばったと倒していきましたから。かくいうわたしも偵察に顔を出したら、声をかける間もなく攻撃されましたからね」
 ぶるりと体を震わせたところから見て、誇張ではなく本当におっかなかったらしい。霊夢と名乗っただけで大袈裟な態度を取られたのも何となく納得がいった。
「一夜で屋敷中を平らげ、帰って行きましたよ。正しく暴風雨の如くでした。パチュリー様はつくづく災難だったと言っていましたが、レミリア様は負けたというのにやけに愉快そうでしたね。あれからしばらく博麗神社にしょっちゅう通ってましたし、相当気に入ったみたいですよ。霊夢さんの襲撃以来、陰鬱な屋敷にまるで陽が差し込んだかのように、雰囲気がぱっと明るくなりましたよ。ああ、あの頃は本当に楽しかったですね。長らくこの館で働いていますが、最も楽しかった時期かもしれません」
 朗々と語る様子からして、本当に賑やかで素晴らしい一時があったのだろう。かつての霊夢にはそれだけの力があったに違いない。対する自分はといえばここまで来ることすら精一杯、未だにくよくよと悩み解決の糸口すら得られていないときたものだ。
 思考が暗い方向に進み始めたところで、小悪魔が前方を指差す。目を凝らせば遠目に重たそうなテーブルと背もたれの広い椅子が何脚か、それから椅子に座り本にじっと目を通している人の姿が見えた。
『紫色のローブを着た少女を見かけたら警戒しなさい。彼女こそが紅魔館の理を支配する魔女、パチュリー・ノーレッジその人よ』
 遠子の声が脳裏に甦り、雑事が頭から追い出される。霊夢はテーブルのやや手前に着地すると、ローブを着た少女の様子をそっとうかがう。きちんと読んでいるのかと疑うくらいの速さでページをめくったと思えば、とあるページを睨んだまま微動だにしなくなり、またしばらくするとページをぱらぱらとめくるの繰り返しで、見ているこちらが忙しない気分になる読書の仕方だった。
 従者が霊夢の名前を把握していたことからして内外に監視の目を持っており、こちらの接近にもとうの昔に気付いているはずなのだが、顔を上げる素振りすら見せない。声をかけようかなとも思ったが、あまりにも鬼気迫る調子で本と向き合っているから、邪魔をしたら悪いという気持ちが先に立ってしまう。
「紅茶でも煎れてきましょうか? ああなるとしばらくは集中が解けませんよ」
「無理矢理解こうとしたらどうするの?」
「命が百ほどあればそれもお勧めできるかもしれませんね」
 生憎と命は一つしかない。それに忘我を来すほど集中して物事に当たっているのを邪魔して良いことのあった試しがなかった。できるだけ早く話を進めたかったが、ここは急がば回れという格言に従うべきだと判断する。
「お好きな席に座ってください。美味しいお菓子もご用意しますよ」
 小悪魔はそれだけを告げ、目の前から瞬時に姿を消す。無詠唱の瞬間移動だなんてやはりただ者ではないと思いながら、霊夢は近くの椅子に着こうと手を伸ばす。そのときパチュリーがごほごほと咳込み始めた。体調を崩した老人のような、聞く者を不安にさせる濁った咳が続き、霊夢は慌ててパチュリーに駆け寄ると背中をさする。
 背を丸めて押し寄せる咳を必死で堪える様子はとても手練れの魔法使いには見えなかった。しばらくすると徐々に咳の間隔が広くなり、小康状態と言えるほどには落ち着いたのだが、口元を覆っていた掌にはまるで墨のように黒い血が広がっており、思わず眉をしかめてしまう。こんなに不健康な血を霊夢はこれまで見たことがなかった。
「客人だというのに手間をかけさせたわね」パチュリーは血塗れの手をぐっと握りしめ、ゆっくりと開く。すると血の痕は綺麗さっぱり消え失せてしまった。「少しばかり調子が良いからと言って無理をするものじゃない」
「無理、というのは魔法の霧を操ってもう一つの霧を遠ざけたこと?」
「ええ、その通りよ。もしかしてそれを見たからこちらにやってきた?」
 頷くと、パチュリーはゆっくりと息を吐いた。
「それは申し訳ないことをしたわね。混乱させるような情報を与えてしまったみたい。だとしたらここにやって来たのは全くの偶然なのかしら?」
 若干の失望を示したところからして、パチュリーは霊夢が何らかの有益な情報を持っているのではないかと期待していたようだった。
「いえ、元々この館を訪ねるつもりではありました。神社で使っているパソコンにこんなメールが届いたんです」
 パチュリーはパソコンやメールという単語を聞いて露骨に嫌そうな顔を浮かべたが、プリントアウトした本文に目を通してくれた。何か分かれば良いなと思ったのだが、パチュリーはそれをすぐに投げ捨ててしまった。
「出来の悪い捏造だわ」即座に断言し、それ以上のことを口にしなかった。表情にこそ出さないものの、腹に据えかねているのは明らかだった。「こんなものを信じてうちにやってきたのなら、貴方はかつての霊夢とは違う。とんだ三流巫女ね」
「それにわたしの勘も、まずはここを訪れろと訴えています」
「だとしたら三流未満ってことになるわ。確かにこの館の主はかつて、太陽が眩しかったからなんて酷い理由で霧を生み出し、昼を隠そうとした。咲夜の名前からこの屋敷を連想したってことはかつての異変を調べることができたってこと。それならばかつての異変と今回の霧が全く異なる現象であると分かるはずよ」
 霊夢は渋々ながらに頷いた。かつての霧は紅に彩られており、今回の霧は白である。紅霧は妖気によって生み出されたものだが、あの霧は微かな魔力こそ含むものの妖気はまるで感じられなかった。それでも霊夢はまずここに来なければならないと感じた。だがそれを上手く言葉にすることができない。
 しばらく睨み合いが続いた。あるいは勘と称した感覚の言語化を待ち受けていたのかもしれない。だがどれだけ頭を振り絞っても勘は勘でしかない。どうにもままならず、耐えきれずに視線を外すとパチュリーは先程よりも大きな息を吐いた。
「語り得ぬものについては沈黙しなければならないとは言うけれど、感覚できるものならば語り得ぬように思えても、何らかの知見が引き出されなければならない。魔法使いに限らず、これは叡智の鉄則と言うべきよ」
 パチュリーは難解な言い回しとともに席を立つと、霊夢には分からない言葉を口の中でもごもごと唱え始める。その身が空中に浮かぶとともに魔の気配が溢れ、霊夢は慌てて距離を取る。強大な魔法を行使しようとしているのが分かったからだ。その意図は分からないにしても、攻撃の意志があることはあまりにも明らかだった。
 霊夢は慌てて魔術封じの札を打つ。強力な魔法使いを相手にする可能性があると分かっていたから用意したものだったが、効果を発揮する前に陽炎のような揺らめきが生まれ、札が一瞬で燃え尽きる。次の瞬間には大量の火球が現れ、それぞれがパチュリーを中心として、お互いにぶつかることなく円弧を描き始める。
「輝くもの自ずから天より堕ち、外敵を打ち破らん」
 先程までの咳や細々とした喋り方が嘘のような朗々とした宣言であり、同時に攻撃開始の合図でもあった。
《日符『ロイヤルフレア』》
 符の宣言とともに、火球が一斉に火炎弾を発射する。慌てて上昇し一斉射をかわすも火炎弾は途切れることなく執拗に霊夢を追いかけてくる。このままでは図書館が火の海になるのではと一瞬だけ危惧もしたが、初っ端からの猛攻に余計なことを考える余裕はすぐになくなった。射線をずらすため空中を動き回り、隙を縫って魔術封じの札を打ち込んでは見るものの、高速でパチュリーの周りを巡る火球に撃ち落とされ、届くかと思えた一撃も熱波の壁のようなものに燃え尽きた。次に針を撃ち込んでみたが、それすらも呆気なく溶かされてしまい、一撃も命中することはなかった。札にも針にも耐火の加護を付与しているから並の熱では煙すら出ないはずなのだが、パチュリーの魔法はそれを平然と突き抜けてきた。
「手詰まりならばさっさとけりをつけてしまうのだけど。それとも降参する?」
「冗談! 今からあっと驚く一撃をお見舞いしてやる」
 霊夢は啖呵を切るとともに、正面突撃を敢行する。針すらも溶かす高温の火炎をかわしながら前を目指すのは恐ろしかったが、術者への近接攻撃以外、この魔法を破る術を思いつかなかった。だが火炎弾の勢いは激しく、距離を詰めるとたちまち回避に専念するしかなくなり、後退することを余儀なくされる。近付こうにもその取っかかりさえつかめない。
「驚きの一撃を食らわしてくれるんじゃなかったの?」
 霊夢は無言で歯を噛み合わせた。一、二、三、四……第五段階まで一気に加速すると、火炎弾や火球の動きが一気に鈍く見えるようになった。火球から放たれる火炎弾を紙一重でかわし、もう一度だけ前へ。回避速度が急に上がったと気付かれたが、対応するよりもこちらが弾幕を突破するほうが少しだけ速かった。
 パチュリーの周囲を巡る火球も潜り抜け、熱に摩耗しない霊力の塊を撃ち込むために符を取り出そうとする。これでようやくパチュリーの驚く顔が見られると思った。
 だがその顔にあるのは余裕の笑みだった。嫌な予感がして急制動をかけたと同時、火球が目の前を通過していく。慌てて後方へ撤退し、スペルの全容を視界に入れる。火球は全て静止しており、パチュリーの周りで怨霊のように浮いていた。
 円弧以外の動きも取れるのだと最初から気付いておくべきだった。一定周期の運動にしていたのは術者にとって一番扱いやすいパターンであっただけに過ぎない。火球の一つ一つを、おそらくはパチュリーの意志で自在に操ることができるのだ。
「生憎だけど、その技は散々見てきているの。魔理沙に教わったんでしょう? もっとばれないように歯を噛み合わせないと。いま五速ってことは上げることができてあと一つ、あるいは二つってところかしら」
 そしてこちらの加速はとうに見抜かれていた。魔法使いの技なのだから同業者にはすぐ気付かれると考えるべきだったのだ。あまりにも見透かされていて霊夢はぐうの音も出なかった。
「罠を避けたのだけは及第点ってところかしら。色々と杜撰だけど基礎能力は高いみたいね。でもそれってじわじわ削られて苦しいやられ方をするってことよ」
 火球が再びパチュリーの周囲を旋回し始める。前と違うのは火球の一部が静止したままでパチュリーを囲い、壁を作っているということだ。つまり接近しての攻撃を仕掛けても防がれる可能性が高い。このままでは為す術もなくやられるだけだと分かっていても、霊夢には火炎弾を避け続けるほかできることがなかった。強化も飛行も霊力を消費する以上、永遠に逃げられるわけではない。いずれパチュリーの魔力も尽きるが、こちらの枯渇のほうがずっと早いはずだ。
 符を切るか、それとも別の手段を取ることができるのか……否、温存を考えられる局面なんてこの館ではどこにも存在しない。ここは撃てるだけの手を切るしかなさそうだった。
 決断とともに符を取り出し、縦に裂いて中に込めた術を発動する。白光する巨大な球が現れ、パチュリーを目標と察知して一直線に飛んでいく。霊力を結界の器に注ぎ込んで放つ、博麗の秘技の一つである。オリジナルは同じ威力の球を四発同時に発射するのだが、今の霊夢では一発が精一杯だった。
 パチュリーは目標を霊夢から光の球に切り替え、集中砲火を浴びせていく。札や針と違って燃やすことはできなかったが、魔力のこもった炎は霊力の球から徐々に力を奪っていく。妖力と魔力がぶつかりあい、目映い閃光がまき散らされ、まるで昼間の太陽の下にいるかのような明るさだったが、それも長くは続かなかった。霊力の球は火炎弾の一斉射撃を受けてもなお突き進み、火球をいくつか薙ぎ払ったものの、パチュリーの眼前で遂に消滅し、跡形もなくなってしまった。
 最大の攻撃を受け止めきり、息をつきかけたところでパチュリーは霊夢の姿がどこにも見えないことに気付く。同時に魔を滅する霊力の光が直下に生まれ、急速にせり上がって来た。パチュリーは舌打ちとともにロイヤルフレアの火球を下方に集中し、魔力の防壁を築いて霊力の波を受け止める。
 二つ目の技も食い止められ、霊夢は驚愕に目を見開いていたが、パチュリーからすれば大技二つを惜しげもなく撃ち出して来るのが意外だった。先があるのだから温存しての突破を試みるだろうと考えていたのだが、予想外に思い切りが良かったのだ。最後まで思慮を優先させるタイプだったと考えていたが、いざとなれば切り替えることもできるらしい。
 身を焦がすような霊撃は十秒もしないうちに通り抜けていったが、魔力の火球も一つ残らず掻き消されてしまった。ともあれ防ぎきったと判断し、次の魔法を唱えようとしたが、漏れたのは濁った喘鳴の音だけだった。急いで地面に下りると最後の集中力も途切れ、パチュリーは堪えきれずに酷い咳を繰り返す。肺腑を抉るようなえげつない咳だった。幸いにして霊夢からの追撃はなく、体調が急激に悪化したのを察知したのか、小悪魔が慌てた様子で姿を現すと吸引器を口元に当ててくれた。
 竹林に住む医師が処方する特別製だった。パチュリーが有する毒に関する研究成果を提供するのと引き替えに薬を届けるという契約を交わしたのは七百年近くも前の話だが、今でも月に一度、兎耳の従者が届けてくれるのだ。吸引を繰り返すとようやく少しだけ楽になり、喘鳴を交えながらも言葉を紡ぐことができるようになった。
 その様子を端から見ていた霊夢はほっと息をつく。このまま力尽きるのではないかと思うくらいの勢いで咳込み、血を零していたからだ。パチュリーは小悪魔に支えられながらよろよろと立ち上がると右手を大きく開き、喉を刺激しないよう慎重に呪を唱える。すると床に零れていた血が掌に集まり、吸い込まれていった。
 魔法の力を秘めた血を体内に巡らせているのだろうか。それとも単に貧血を補うための魔法を行使しただけなのか。どちらにしろ霊夢に害はなさそうだし、立っているだけでも辛そうなパチュリーに関係のない質問をするのははばかられた。
 パチュリーは椅子に座り、霊夢にも席に着くよう目配せする。いきなり仕掛けてきておいて自分勝手だなとは思ったけれど、喘息がなければ負けていたのは自分だった。それにパチュリーは今にも気絶しそうであり、難癖をつけて余計な時間を消費する暇はなさそうだった。
「付き合ってくれてありがとう、お陰で知見を得られたわ」
 パチュリーは霊夢が渡したメールのプリントアウトに再度、目を通す。
「やはり咲夜がこんなことをするとは思えない。だが、貴方の勘も信じるだけの価値がある。かつてここを訪ねてきた霊夢ほどではないけれど、十分な力を有していることをこのわたしに証明したのだから」
 唐突な弾幕決闘は勘の強さを測るための試験だったらしい。辛うじて眼鏡には適ったことにほっとしながら、霊夢はパチュリーの話を続けて傾聴する。
「咲夜は七百年近くも前に死んだ人間よ。この郷においてそれだけ昔の知識を使うならば、情報源は自ずと限られてくる。貴方はおそらく稗田の知識から咲夜の名前が持つ意味を知った。ではこの偽メールを出した何者かはどこから情報を手に入れたのか」
「偽、と断言して良いのかしら?」
 霊夢の中でふとした疑問が浮かび、少し迷ってから口にする。パチュリーはこれが咲夜の名を騙る何者かの仕業であると確信しているようだが、かつての親交を基にした、確度の低い断定でしかないと思えたのだ。パチュリーは霊夢の発言が意味するところを察したのか一瞬、酷く不機嫌そうな表情を浮かべたが、口元に手を当てる。苛立ちはすぐに消え、気難しい思索だけがその目に宿り続けていた。
「七百年も生き続けられる人間なんていないとは言い切れない。ここには人間をやめる方法なんていくらでもあるものね」
 さらりと言ってのけることからして、思い当たる節があるのだろう。もしかするとパチュリー自体、人間をやめてしまったくちなのかもしれない。
「わたしやレミィ、フランの目すら欺く死んだ振りも咲夜なら可能なのかもしれない。そもそも時間と空間を操る能力者ならば寿命なんて関係ないのかもしれない。その可能性を私情のみで封じていると言いたいのね?」
 そこまで示唆したつもりではなかった。十六夜咲夜がそこまで信じられるものだと、一度も会ったことがない霊夢には理解できないだけだ。
「わたしたちは今まで十六夜咲夜が既に死んでいるという前提でのみ、事件を考えてきた。もしかしたら生きているかもしれない、という可能性まで広げることで見えてくるものがあるのかもしれない」
 霊夢の提案に、パチュリーは思わずうなり声をあげる。知識の宝庫に居を構えた彼女にさえ手に余る問題だったらしく、凍り付いたように微動だにしなくなる。言葉はなくとも凄まじい速度で思考が走っていることが見て取れた。
 だがその集中は長く続かなかった。三度喘息に苛まれてしまったからだ。喉を使うだけでなく、思考の集中による軽い緊張状態でさえ喘息を誘発するらしい。吸引器を口元にあて、ぜいぜいと息をするのは何度見ても落ち着かない気持ちになる。
「辛いならもう少し待つけど?」
 症状が収まるのを待ってから言うとパチュリーは小さく首を横に振り……ごほごほと漏れ出す咳に今度は渋々頷いた。
「これでも一時期よりはましになったのだけどね。あの霧と来たら妙に肺を刺激するのよ。最近はずっと小康状態が続いていたのに一気に酷くなって……なるほど、確かに咲夜の仕業かもしれないわね。あの霧はわたしの弱点を突くためのものかもしれない」
 霊夢もあの霧に入ったとき、微かなむず痒さのようなものを覚えた。それに霧のせいかは不明だが、西の里で体調を崩す者が増えているとの報告もある。もしかすると鼻や喉が弱い者を狙い撃ちにして散布されたものなのかもしれない。
「そう言えばあの霧が出始めた頃から、メイド妖精たちの調子が優れないそうです」
 それまでずっと黙っていた小悪魔がぽつりとそんなことを呟く。パチュリーはどうしてそんな大事なこと、今まで黙っていたのと言わんばかりに小悪魔を睨みつける。
「わたしもつい昨日、美鈴さんから聞いたばかりなんです。最初は妖精の気紛れかと思っていたが、いつまで経っても調子が戻らない。わたしとしてはやはりあの霧に原因があると思うのだが、パチュリー様の魔法で何とかできないだろうかと相談されました。だから黙っていたんです」
 小悪魔は涼しそうな表情でそう告げると喉を指差す。そんな症状であの霧を全て吹き飛ばすなんて無理だと言いたいのだろう。パチュリーもそれは分かっているのか、苦々しい表情ではあったものの怒りは鞘に収めたようだった。
「あの霧には微量の魔力が含まれていたわ。もしかすると何らかの魔法がかかっているのかもしれない」
「だとしたら既に察知しているわ。確かに魔力は感じられるけれど、あれはむしろ術後の……いわば魔法の残り滓みたいなものよ。かなり行儀の悪い魔法使いなのか、魔道をろくに知らないものが何らかの術式を発動したのかもしれない。わたしでも流石に館の中からでは、どんな魔法を使ったかまでは逆解析できなかった。この忌々しい喘息さえなければ現地まで赴いたのに」
「喘息を悪化させるようなことがなければ、様子見に徹したと思いますけど」
 パチュリーはそんなことないと言わず、後ろめたそうに視線を逸らす。
「そう言えば、フランはどういう方針なの? 彼女も動く様子がないのだけど」
 気まずさを誤魔化すためか、パチュリーが小悪魔に訪ねる。どうやら屋敷の中に住んでいても全ての事情に通じているわけではないらしい。
「フランドール様は少なくとも美鈴さんには待機を命じてますね。理由を訊ねたそうなのですが、動く気にならなーい、と明るい声で答えられたそうです」
「ふむ……昔はこういうことがあると積極的に関わろうとしてたのに」
「いつもレミリア様に窘められて姉妹喧嘩してましたよね、懐かしいです」
 パチュリーは心の底からうんざりだという顔をする。吸血鬼同士の喧嘩ならばさぞかし凄まじいものだったのだろう。
「それで、付け加えるようにこう言ったそうです。こういう事態になると出張ってくる便利な人間がいるからお手並み拝見と行きましょう」
 もしかしなくても自分のことに違いなかった。昔のことを知っているならば異変解決に巫女が出張ってくると予想はできるのだろうが、掌で踊らされているかもしれないのだとしたら、あまり良い気持ちにはなれない。
「あまり気分を悪くしないで頂戴ね」霊夢の気持ちを察したのか、パチュリーが節目がちに話しかけてくる。「昔はどれだけ手があっても余るほどの問題児だったんだけど、失うことを知って少しだけ臆病になってしまったの。この館に在るものが消耗されてしまうのはできるだけ避けたいと考えてしまうのよ」
 フランもまた咲夜を失い、悲しんだのだろうか。それとも他の誰かをかつて失ったことがあるのだろうか。どちらにしても今は詮索している場合ではないだろう。
 パチュリーはもう一度思索に集中しようとしたが、やはり上手く行かないらしい。喘鳴からの激しい咳に襲われ、三度吸引器を使用する羽目となってしまった。
「どうやらここで貴方に何かを教えるのは、わたしではないらしい」パチュリーは咳が収まると、小さく首を横に振る。「霧の原因はここにはない。にも拘わらずここを訪れたということは、ここに何らかのヒントがあると推測できるわ。巫女の勘はまだ薄れていないのでしょう?」
 自信はなかったが、ここに何かがあるという感覚は薄らぐばかりかいや増すばかりだ。それでいて霊夢には何を探して良いのか分からなかった。
「レミィを訪ねなさい、咲夜に一番近いのは彼女だから。酷い堅物だけど貴方の力があればもしかしたら真相の一端に辿り着けるかもしれない。小悪魔、巫女をレミィの寝室まで案内しなさい」
 小悪魔は額に手を当て、敬礼のポーズを取る。どうやらこの屋敷での探検はまだ終わらないらしい。霊夢は椅子から立ち上がると、未だに辛そうな様子のパチュリーを一瞥する。彼女は霊夢の視線に気付き、不機嫌そうに顎をしゃくった。心配する必要などないからとっとと行けということなのだろう。
「何とか頑張ってみる。事件を解決すれば喉も楽になるのよね?」
「未熟者が他人のことを考えないで。自分のことだけ考えて事を成しなさい」
 ぴしゃりと叱られてしまったが、心配されていると分かったから悪い気はしなかった。ぶっきらぼうでいつも不機嫌そうだが、根から悪い人物ではないらしい。
「では先に進みましょう。パチュリー様、すぐに戻りますので」
 パチュリーは小悪魔を手で払う仕草をする。霊夢は最後に一礼をし、先導する黒羽根の少女の後を追ってパチュリーのもとを後にするのだった。

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