これまでの事件簿をお読みの方ならば先刻ご承知である通り、私たち《秘封探偵事務所》は、常に異変の中心に、博麗の巫女に先んじて関わってきた。この幻想郷に迷い込んだときに居た場所が紅魔館の図書館だったときから、それはもう運命づけられたことだったのかもしれない。
とはいえ、私たちの存在がそれらの異変に大きな影響を及ぼしたかというと、首を傾げるところはないでもない。一番大きな影響を与えたのは、我が相棒が主犯のレミリア嬢をそそのかしたのが直接のきっかけである紅霧異変だろう。しかしこれは前にも書いた記憶があるが、相棒がいなくてもレミリア嬢はやがて異変を起こしただろう。永夜異変では私が人質に使われてしまったが、それは偶然巻き込まれたようなものだし、博麗神社と守矢神社の宗教戦争の引き金を引いたのも私たちの存在であったけれど、これも私たちがいなくても同じ結果になったように思う。
かくして、異変解決を生業とするわけでもないのに毎回異変に首を突っ込み、しかし異変の首謀者側にいるわけでもなく、首謀者の周辺をうろちょろしているだけの傍観者――という奇妙なポジションで、私たちはいつも、この幻想郷の異変に関わってきたわけだ。
さて、今回語るのは、里の北方、墓地の傍らに新しくできた、あのお寺の話である。
魔界に封印された僧侶・聖白蓮を解放するため奮闘した弟子たちと、それにちょっかいをかけてきた博麗の巫女、普通の魔法使い、そして守矢の風祝の物語。博麗サイドからは《宝船騒動》として記録に残され、寺の側からはいずれ、あのお寺の縁起としてまとめられるのだろうその物語において、私たちがどう関わり、何を為したかというと――。
一言でいえば、主犯である。
今回の記録に記す《宝船騒動》――それは紛れもなく、私たち《秘封探偵事務所》が私たち自身の意志で起こした異変だった。
もちろん、独力ではないし、異変を起こそうとしたわけでもない。大勢の協力を得て、人助けをした結果、それが博麗の巫女からは異変のように見えたというだけの話だ。
だが、計画を立て、各方面に根回しし、準備万端手筈を整えたのが我が相棒、宇佐見蓮子であることは、紛れもない事実以外の何物でもない。
かくして私たちは、幻想郷の歴史に、《宝船騒動》の首謀者として名を残すこととなる。
今回私が記すのは、私たちがいかにしてその首謀者となりしか、騒動の結果として何を見たのか、その物語である。
そしてもちろん、今回もまた、この記録は我が相棒の誇大妄想的推理の記録でもある。
千年前、閻魔によって魔界に封じられた、僧侶にして魔法使い、聖白蓮。
それを救おうとした船幽霊、入道使い、毘沙門天の弟子の虎とそのお目付役の鼠。
そして、彼女たちに横から干渉する正体不明の妖怪――。
あのお寺――命蓮寺の面々をめぐる謎は、ただひとつの問いに集約される。
――なぜ、そうしなければならなかったのか?
それでは、語り始めるとしよう。
私たちが首謀者として起こした《宝船騒動》の顛末を。
そして、ただひとつの問いかけに対して、名探偵・宇佐見蓮子がいかな妄想を繰り広げたかの物語を。
とはいえ、私たちの存在がそれらの異変に大きな影響を及ぼしたかというと、首を傾げるところはないでもない。一番大きな影響を与えたのは、我が相棒が主犯のレミリア嬢をそそのかしたのが直接のきっかけである紅霧異変だろう。しかしこれは前にも書いた記憶があるが、相棒がいなくてもレミリア嬢はやがて異変を起こしただろう。永夜異変では私が人質に使われてしまったが、それは偶然巻き込まれたようなものだし、博麗神社と守矢神社の宗教戦争の引き金を引いたのも私たちの存在であったけれど、これも私たちがいなくても同じ結果になったように思う。
かくして、異変解決を生業とするわけでもないのに毎回異変に首を突っ込み、しかし異変の首謀者側にいるわけでもなく、首謀者の周辺をうろちょろしているだけの傍観者――という奇妙なポジションで、私たちはいつも、この幻想郷の異変に関わってきたわけだ。
さて、今回語るのは、里の北方、墓地の傍らに新しくできた、あのお寺の話である。
魔界に封印された僧侶・聖白蓮を解放するため奮闘した弟子たちと、それにちょっかいをかけてきた博麗の巫女、普通の魔法使い、そして守矢の風祝の物語。博麗サイドからは《宝船騒動》として記録に残され、寺の側からはいずれ、あのお寺の縁起としてまとめられるのだろうその物語において、私たちがどう関わり、何を為したかというと――。
一言でいえば、主犯である。
今回の記録に記す《宝船騒動》――それは紛れもなく、私たち《秘封探偵事務所》が私たち自身の意志で起こした異変だった。
もちろん、独力ではないし、異変を起こそうとしたわけでもない。大勢の協力を得て、人助けをした結果、それが博麗の巫女からは異変のように見えたというだけの話だ。
だが、計画を立て、各方面に根回しし、準備万端手筈を整えたのが我が相棒、宇佐見蓮子であることは、紛れもない事実以外の何物でもない。
かくして私たちは、幻想郷の歴史に、《宝船騒動》の首謀者として名を残すこととなる。
今回私が記すのは、私たちがいかにしてその首謀者となりしか、騒動の結果として何を見たのか、その物語である。
そしてもちろん、今回もまた、この記録は我が相棒の誇大妄想的推理の記録でもある。
千年前、閻魔によって魔界に封じられた、僧侶にして魔法使い、聖白蓮。
それを救おうとした船幽霊、入道使い、毘沙門天の弟子の虎とそのお目付役の鼠。
そして、彼女たちに横から干渉する正体不明の妖怪――。
あのお寺――命蓮寺の面々をめぐる謎は、ただひとつの問いに集約される。
――なぜ、そうしなければならなかったのか?
それでは、語り始めるとしよう。
私たちが首謀者として起こした《宝船騒動》の顛末を。
そして、ただひとつの問いかけに対して、名探偵・宇佐見蓮子がいかな妄想を繰り広げたかの物語を。
第9章 星蓮船編 一覧
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イヤッッホォォォオオォオウ!新作だああああ!
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