東方二次小説

こちら秘封探偵事務所第7章 緋想天編   緋想天編 プロローグ

所属カテゴリー: こちら秘封探偵事務所第7章 緋想天編

公開日:2017年04月29日 / 最終更新日:2017年04月29日

妖怪の山に外来の神社――守矢神社が現れてから、約一年。
 その間、幻想郷は異変もなく、平穏な日々が続いていた。騒ぎらしい騒ぎといえば、湖にいる氷精の子が光の妖精とケンカして、ついでに最強の座を賭けて霧雨魔理沙さんに挑んできたとかなんとか、そんな他愛のない話が聞こえてきたぐらいである。
 第一二三季、夏――そんな平穏を叩き壊したのは、天候の異変と、局所的な大地震だった。
 そう、博麗神社の倒壊が、文字通り幻想郷を揺るがした――いや、逆か。緋色の雲が浮かび、幻想郷が揺るぎ、博麗神社が倒壊した、あの異変である。

 それは、天界の退屈した天人くずれが引き起こした、おそろしく傍迷惑な異変だった。
 その詳細はこの記録で述べていくことになるが、一言でまとめれば――まっこと、他人の迷惑を顧みない存在が強大な力を持つことほど、おそろしいことはない、という話である。
 ともかくその異変は、博麗神社の二度の倒壊という大きなインパクトを中心として、様々な人妖がそれぞれに動き回り、異変の主に辿り着いたり辿り着かなかったりした異変であった。博麗霊夢さんが主犯を叩きのめして終わり、だけでは済まなかったという点においては、伊吹萃香さんが起こした《三日置きの百鬼夜行》に近い騒動であったとも言える。

 さて、その博麗霊夢さんから、なぜか異変の中心地に常にいる連中として目を付けられてしまっている、我らが《秘封探偵事務所》はといえば――。
 もちろん言うまでもなく、この異変にも首を突っ込んでいるわけである。
 しかも、私と宇佐見蓮子だけでなく――去年の秋、この事務所に新しく加わった非常勤助手、東風谷早苗さんも加わった三人で。
 というわけで今回のこの記録は、好奇心だけで生きている命知らずの名探偵と、その名探偵の悪い影響を受けすぎた外来の風祝の、無軌道かつ猪突猛進な、常識に囚われないしっちゃかめっちゃかの大騒ぎに、《秘封探偵事務所》の良心たるこの私、マエリベリー・ハーンがいかに振り回されっぱなしであったか、という物語である。
 しかも、困ったことには、私を振り回すのは蓮子と早苗さんだけでもないわけで――。

 そしてもちろん、今回もまた、これは我が相棒の誇大妄想的推理の記録でもある。
 とはいえ、今回の異変は犯人も動機も、綺麗さっぱり明瞭に判明している。犯人のやろうとしたことは明瞭であり、疑問を差し挟む余地はほぼない。そしてこう言ってはなんだが、今回の異変の犯人は、西行寺幽々子さんや八意永琳さんのように深謀遠慮を巡らすような性格とは言い難いし、あるいは紅魔館のようにそれを代行するような共犯者も見当たらない。
 では、《六十年周期の大結界異変》の記録に続き、読者諸賢にこのプロローグで挑戦しよう。
 これ以上なく単純明快なこの異変に、名探偵はどんな謎を見出したか?

 ひとつだけ、言っておくことがあるとすれば。
 この異変における最大の謎は、実はまだ私たちにも解き明かせていないのだ。
 外の世界の未来を知る私たちも、この世界における自分自身の未来は不可知であるから――。

 さあ、それでは語り始めるとしよう。
 緋色の雲と異常気象、そして局所的大地震に幻想郷が揺れた夏の出来事を。
 そして名探偵とその助手と、奇跡を起こす少女が、そこにどう首を突っ込んでいったかを。

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この小説へのコメント

  1. この二ヶ月長かった…

    常識外れな蓮子と常識にとらわれない早苗と
    秘封倶楽部の常識人(爆笑)にして
    良心(苦笑)のメリーが
    トラブルメーカーにしてまないt
    ビューティフル天子に
    どんな風に振り回し、振り回されるのか
    超楽しみです!

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