東方二次小説

火車のゆくえ火車のゆくえ   火車のゆくえ 第3話

所属カテゴリー: 火車のゆくえ火車のゆくえ

公開日:2016年01月31日 / 最終更新日:2016年01月31日

「それは傑作ですね」
 阿求邸での一件を小鈴に話し、猫化した姿も披露してやると、彼女は腹を抱えて笑い出した。
「な、何でだい?」
 反抗心よりも先に驚きが来た。笑われた意味がまったくもってわからない。
「同じ状況だったら、私だってすぐに妖怪だってわかりますよ」
「ええ? どう見ても普通の猫じゃないかい?」
「全然違いますよ。お燐さん、自分が何の妖怪かお忘れですか?」
「忘れるもんか。火車だよ火車」
「では、火車を引くのは?」
「もちろん猫さ」
 誘導されるがままに答えると、
「そう、猫ですよね。でも普通の猫でしたっけ?」
 その質問の意味を理解するのに、たっぷり一分はかかった。理解に至ると、顔中がぼっと熱を帯びた。
「……そういうことかい」燐は、猫耳の右側を掌で押し潰した。
「そういうことですよ」小鈴がくすりと笑う。
 火車を引くのは猫又だ。
 猫又は、年老いた猫がそれでも生き存えて妖怪となったもので、特徴は、なんといっても尻から生える二本の尻尾である。一目見れば、阿求でなくとも誰だって看破できよう。
「こんな単純なことにも気づけなかったなんて」
 アホだと思った。おくう以上のアホっぷりである。もう彼女を鳥頭だとからかえなくなってしまった。
「まあまあ。普段気になさらないことでしょうし」
「それにしたって、自分の姿形を覚えてないってのはいただけないよ」
 しかしこれで疑問が一つ解消した。ついでにもう一方の疑問も解消してしまおうと、続けて質した。
「ところでさ。阿求は妖怪嫌いなのかい?」
 すると小鈴は、実にあっけらかんと肯定した。「ええ、そうですよ」
「やっぱりそうなんだ」
「身をもって知ったと思いますが」
 小鈴はテーブルからずいと身を乗り出した。「実は彼女、特に猫又が嫌いなんです」
「なんでさ」
 猫系の妖怪は比較的人間たちに愛されていると思っていただけに、ショックな事実だった。
「猫又に何度も原稿をやられたから、ですよ」
「そう、なんだ」
 あのとき、阿求は筆を執っていなかったが、そのような過去が影響していたのであれば、鬼気迫る表情で薙刀を振り回していたことにも納得だ。
「今度機会があったら彼女の史紀を見せてもらうといいですよ。妖怪とか妖精に対して、相当偏屈な書き方をしているので」
「それって、逆にあたいが読んだらいけないものなんじゃ?」
 あれやこれやと雑談を挟んで、いよいよ件の歌の話を滑り込ませようとしたとき、ちりん、と来客を告げる鈴の音が店内に響いた。
「邪魔するぞい」
 暖簾をくぐってきたのは、長身で風流な着物を流した女だった。
 切れ長の目で、丸メガネをかけているせいもあってか知的に見える。胸の辺りにまで垂れている長髪が、実年齢をいくらか押し上げているようでもあった。
 が、それは見た目の話だ。燐は猫であり、犬ほど鼻がきくわけではないが、それでも女から臭ってくる獣臭はしっかりと判別できた。
 彼女もまた妖怪か――小鈴が騒がしくなるな。そう思っていたが、予想に反した応対がとられた。
「あ、いらっしゃいませ」
 弾んだ声だった。燐のときとは打って変わって、非常に親しげだ。
「一ヶ月ぶりかの。息災じゃったか?」
「おかげさまで。そちらも?」
「おう、儂は健康体じゃしな」
 お互いにからからと笑いあっている。
 この状況をどう呑み込めばいいのだろう。小鈴は妖怪に不慣れなのではなかったのか?
「それで」女がこちらを向く。「この方は?」
「あっ、紹介しますね。こちらは火車という妖怪の、お燐さんです」
 紹介されては黙っている訳にもいかず、燐は頭を下げた。「どうも、燐です」
「ほう、火車とな。ここは妖怪の出入りは禁じておらんかったのかな?」
「ええと、禁止してはいないんですけど」
 途端に小鈴の笑顔が引きつった。やはり妖怪を快くは思っていないようだ。
 ではなぜ、この女には愛嬌を振りまくのか。
「まあ、別に店主がいいのならいいじゃろ。妖怪にだって友好的なやつも多くいるからのう」
「そうですよね。お燐さん、とってもいい人なんですよ」
 安堵の表情を見せる小鈴に、燐は後頭部にこつりと、軽い拳骨をくらったような衝撃を受けた。
 どうやらさっきの引きつりは、小鈴の妖怪に対する印象のせいではなく、来客者の妖怪に対する印象を心配したせいだったようだ。人里ではいまだ妖怪を疎み、忌避している者も多くいる。そのことを忘れていた。
 でも、と燐は苦笑を禁じ得なかった。
 小鈴はこの女を人間として見ているようだけれど、中身は妖怪なんだよねえ。こんな獣臭い――この臭いは狸か?――女の人間なんてまずいやしないよ。
 さてはて、本当のことを話すべきかどうか。
「しかし、妖怪が出入りしていると噂になると、お主としてはちとまずいんじゃないかのう」
 心が読めるのか、女は意味ありげに横目を向けてきた。
「え……ま、まずいですかね」
「博麗の巫女を見ればわかると思うんじゃが」
 その言葉だけで、小鈴の顔は青くなってしまった。
 博麗の巫女のようになる――つまりそれは、ここが妖怪神社ならぬ妖怪貸本屋になるということであり、閑古鳥が鳴いて貧乏に陥るということであろう。
 それこそ小鈴が話していた、家計を苦しめる火車の面目躍如じゃないか、と燐は頭を抱えたくなった。
「それは困りますっ」
「じゃろうて」
 女はふむ、と一つ頷いて、
「のう、お燐とやら。お主、完全に人に化けることはできんのか? もちろん見た目だけでいいんじゃが」
「完全に化ける?」つい聞き返した。
 そんなこと、考えたことすらない。
「できなさそうじゃな。まあ、その必要に迫られたことが今までなかったじゃろうから、できなくても不思議じゃないが」
「やってみればできるかもしれないけど」
「じゃ、ちょっとやってみようか」
 あれ? なんであたいの方が悪いみたいになってるんだ? こいつだって妖怪のはずなのに。
「そら、ちょいと変身してみぃ」
 女は近くにあった椅子を引き寄せると、そこにどかっと音を立てて座った。偉そうな着席の仕方だった。それが、燐の心に火を付けた。
 やってやろうじゃないの!
「よぉく見ておきな」
「おうとも。よぉく見ておくぞい」
 燐は瞼を閉じ、イメージ作りに没頭した。
 猫から人へ。人から猫へ。変化の行き来は自在にできる。あとはその精度だけだ、と自らを鼓舞して。
「せーの」目は開けず、かけ声一つで変化を実行した。
 並々ならぬ気合いが入った。これまでで一番精力を使った変化だった――のに。
「その……なんだ。戻っておるが」
「……にゃあ」
 わかってる、という猫語だ。間違っても可愛いぶっているわけではない。
「でもでもっ」小鈴が嬌声をあげた。「やっぱりちょお可愛いんですけど!」
「そうかのう。どうにも儂にはわからんが。人間は猫好きが多いらしいのう」
 それはちょっとばかし違うよ、と燐は心の中で拗ねた。
 猫は猫でも、黒猫はさほど人気がないんだから。
「しかし、これでは店を出入りするのは考えものじゃの」
「それでしたら、一つ案があります」
 ぱち、と胸の前で手を打ち合わせると、小鈴は靴の底を鳴らしながら、壁際の垂れ幕をはね除けて奥へと消えていった。
 しん、と部屋が静まりかえる。まるで夜の帳が下りてきたかのようだった。
 メガネ女が、何か言いたそうな顔でこちらを見ている。けれど唇が動かない。それは燐も一緒で、話しかけるためのきっかけがどうしても掴めなかった。
 気まずさの密度だけが、時間とともに高まっていく。
 そうやって話あぐねていると、急ぎ足といった感じで小鈴が戻ってきた。
「早かったのう」
 同じことを言おうとしていた燐の口が、半ば開いたところで膠着した。
「これですよ。これさえあれば、目立たなくなると思います」
 小鈴が持ってきたのは帽子だった。つばの両端がそり上がった、円筒形の珍しい形をしている。こいしが被っているものに似ていなくもないが、頂点が真っ平らだという点が違っている。色も、こいしのものより更に深い黒だ。
「西洋帽か。英国辺りのものじゃったか」
「私もあんまり詳しいわけじゃないんですよ。頂き物で悪いですが、どうでしょう?」
 胸の前にずいと押し出された帽子を、燐はおそるおそる受け取った。
 ――柔らかい。
 まず手触りの良さが意外だった。見た目は固そうなのに、実際に触れてみると柔らかくてしっとりとしている。上質という言葉がぴったりくるような品だ。
「お気に召しません?」
 上目遣いで言われて、はっとなった。
 すっかり帽子の虜になっていた。
「ごめんよ。珍しくて、つい魅入っちゃってたよ」
「もしよければ、被ってみて下さい」
 ころころと笑いながらそんなことを言われてしまったら、無下に断るだなんてできやしない。燐は内心で苦笑しながら、初めての被り物を頭に載せた。
 だが、すぐに猫耳が邪魔になった。固く、おまけにぴしっと立っているせいで、すぐ帽子の穴の縁に引っかかってしまい、なかなか奥まで入っていかないのだ。
「難しいね、これ」
 なんとか片耳ずつ内側に倒して穴の中に押し込むと、
「なんじゃ、そこそこ似合っておるではないか」
 にやつく女に、存外に褒められた。
「どうです? これなら外見は人間と見分けがつかなくなると思いますけど」
「どうかねえ。ちょっと鏡を見せてもらいたいんだけど」
 このへんてこな帽子を被った自分の姿が、どうにも思い描けない。一体どんな格好になったのか、とてつもなく気になった。
「はい、どうぞ。ちょっと高さが足りないかもしれませんが」
 小鈴が持ってきてくれた鏡は、全身を映せる等身大の鏡だった。
 ただし彼女の持ち物ということもあって、少々高さが足らない。ちょうど頭の天辺が切れてしまっている。
「ありがとね」
 礼を言って、燐は身を屈めた。今度はきちんと被った帽子まで鏡の内に収まった。
 と、鏡の中で、紅の双眸がくるりと丸くなった。
「これが……あたい?」
 人間一人分の寿命から考えたらとんでもなく長生きしているはずだけれど、これほどびっくりしたことは、ちょっと記憶にない。たかが帽子一つでここまで見栄えが変わるだなんて。新鮮な驚きだ。
「キャラが変わっちゃってるねえ」
 三つ編みのせいなのか、はたまた前髪がおかっぱのそれに近いせいなのか。帽子を被った燐は、どう見ても童女だった。
「そんなことないですよ。お燐さん可愛いです」
 褒め言葉のはずだが、可愛いにも色々な意味がある。小馬鹿にする意味も含めて。小鈴に限って、変な意味に捉えるなんてことはないだろうが。
「いかにも子供受けしそうな感じだしのう。手品師でも通りそうじゃな」
 女のにやつきはいまだ止んでいない。さっきまで本人を知的に見せていたはずの丸メガネも、今ではすっかり品位がガタ落ちだ。
「ああ、でも」小鈴が肩を落とした。「尻尾が丸見えですね」
 言われて鏡に向き直ると、横腹辺りからにょろりと尻尾が姿を現した。これには落胆の色を隠せなかった。
「さすがに尻尾を隠すのは難しいよ」
 二本の尻尾はスカートに穴を開けて逃がしてやっている。が、その穴を塞いで尻尾を中に隠そうものなら、スカートが不自然な形に膨らんでしまい、ますます怪しまれるのは明白だ。
「何かいい方法ありませんかね」
「兎の尻尾くらいなら何とかなりそうじゃが、これだけ長くて太さのある尻尾となると、ちと無理があろうなあ」
 その通りだ。隠すのは難しい。無理矢理押し込んでしまうのもありといえばありだが、その場合、どうにも尻尾が窮屈になってしまい、五分と持たない自信がある。
「やはりもっと変化の修練を積むしかなさそうじゃな」
「練習すれば尻尾もなくせるのかい?」
 甚だ疑問だったが、女は自信満々にこう答えた。
「もちろんじゃよ。変化というのにも練度というものがあっての。要は運動能力と同じじゃて」
「詳しいんですね」小鈴が目を輝かせた。
 尊敬の眼差しにも似た、熱い視線を女に向けている。それが燐には気に食わなかった。
 ――なんだい、相手はあたいと同じ妖怪だってのに。
 心の中で毒づくと、すぐ正気に戻った。
 なんだってあたいは嫉妬なんかしてるんだい。これまで、生者になんてこれっぽっちも興味なかったのに。あたいが興味あるのは死体だけだったはずなのに。
「何か考え事か?」
 女に言われ、またぞろはっとなった。
「ううん、なんでもないよ」
「そうかい。じゃ、とりあえず出ようか」
「――え?」
 どうして、という表情を作った燐だったが、逆に二人がどうしたんだ、という表情を向けてきたため、へどもどする羽目になった。
「あ、ああ、そうだね、そうしよう」
 他愛のない好奇心を満たすだけのはずが、どうしてこんなにややこしいことになってしまったのだろう。ただ古歌について知りたかっただけなのに。
 せっかく夢の話でも盛り上がれると思ったのになあ、と燐は未練がましく店を出た。

「儂はマミゾウというんじゃ」
 街道を歩き出すとすぐ、女が名乗ってきた。「二ッ岩マミゾウ」
「あたいの本名は火焔猫燐。お燐でいいよ」
 興味のなさをアピールしてあしらったつもりだったのだが、意に反してマミゾウとやらは気分をよくしたようだった。
「もう感づいているじゃろうから白状するが。儂は妖怪なんじゃ」
「狸?」
 嗅ぎとった臭いの中身を告げると、マミゾウは更に上機嫌になった。
「その通り、化け狸じゃよ。犬ほどではないにせよ、猫の鼻もきくんじゃな」
「それほどでもないよ。ただ、あんたの臭いがキツイだけさね」
 初対面の相手にこんなことを言うのは失礼千万なのだが、言わずにはいられないのが猫の性分なのだった。
「随分はっきりと言うのう。儂、こう見えてもお前さんより先輩のはずなんじゃがな」
 格も上のはずだしのう、とぼやく割に、顔は笑っている。
「そいじゃあ、マミゾウ大先輩と呼んだ方がいいかい?」
「それには及ばん。そうツンツンするでない。お前さんには度胸がある、と言いたかっただけじゃ」
「別に度胸なんてないよ。思ったことをそのまま言ってるだけだから」
「言えてしまうからこその度胸だと思うんだがのう」
 まあいい、とマミゾウは腕を袖の中へしまい込んだ。厚着をしているように見えるが、秋風が肌に染みるのかもしれない。
 燐は鼻をふんとならし、
「それで? どこへ行こうっていうんだい」
「特に考えてないぞい。あのまま店に長居していると、厄介なことになりそうじゃったから出てきただけで」
「厄介なこと?」
「ああ見えても、鈴奈庵は客商売じゃからな。よからぬ噂が立つよりは、立たぬほうがいいに決まっておる」
「妖怪神社みたいに?」
 皮肉ってやったが、マミゾウは真剣な面持ちだった。
「博麗神社は商売をしておるわけではない。が、鈴奈庵はれっきとした商家じゃ。つまらぬ難癖を付けられて駄目になる、なんてこと、お前さんも望まんじゃろう?」
「そんなに大袈裟なことかねえ」
「見えんかもしれんが、儂も商いの道に通ずる者じゃ。そういった事例をいくつもこの目で見てきておる。じゃから差し出がましいのを承知で言うのじゃよ」
「ふぅん」と燐は空返事をした。
 全然理解できない。やっぱり生きている人間は面倒だ。
「それにのう」
 マミゾウは足元に視線を落とした。「あそこは貸本屋じゃ。子供の出入りも多い。そんなところで騒動を起こしてみろ、小鈴の前途は真っ暗じゃぞ」
「――まあ、それは」
 それは、わかる。
 いくら妖怪と人間の垣根が低くなったとはいえ、子供は別問題だ。人間の親は自分の子供を妖怪には近づけさせない。未だ危険を感じているからだろう。
 大人には強力な裁量権があり、自己の責任においてかなりの自由がきく。妖怪と酒を酌み交わすことだって許される。決して世間体は良くないが、それでも仲良くしようと思えば、完全には無理でもある程度は仲良くなれる。あくまで、殺されてもいいという裁量を元に許されるのだ(今の郷のルールでは命の危険もほぼないけれど)。
 だが子供は違う。子供の裁量権など、雀の涙ほどにしかない。危険でもいいから妖怪と仲良くなりたい、というわがままを実行に移せるだけの権利は、大人に庇護されている子供たちにはないのである。
 だから小鈴の貸本屋も、妖怪がたむろする危険な店だと見なされてしまえば、客足が遠のくのは自明の理だ。子供の出入りができないような本屋に行きたがる客など、そうはいないものだから。
「お前さんは知らぬかもしれんが。小鈴はな、週に一度は子供たちを相手に朗読会を開いておる。貸本とはいえ本は高価なものじゃからのう、読み聞かせてやっているのじゃ」
「へえ、朗読会」
 ちょっぴり興味のある話だった。さとりに文字を教えてもらったとはいえ、読めない字もまだまだ山のようにある。読み聞かせてくれるならば、是非その会に参加してみたいと思った。
「それすら取り上げることになりかねんのじゃ。わかったらあの娘のためにも、もうちっと距離をとっておけ」
 命令口調にはかちんときたが、反撃する気力も湧いてこなかった。やっぱり妖怪と人間は相容れないんだ、という諦念に心をついばまれてしまったせいで。
 あたいがどれだけ人間に優しく接したところで――どれだけ懐いてみせたところで、種族間の溝は埋められないんだ。どんなに頑張ってみても、小鈴とは仲良しになれないんだ。
「……帰る」
「えっ? あ、おい」
 引き留めようとするマミゾウの声を無視し、彼女に背を向けて燐は歩き出した。追いつかれないよう、大股を駆使して足早に離れていく。
 だが、脚が重くて普段の歩速が出ない。それだから、夢中で早歩きしている間もずっと、追いつかれやしまいかと気が気でなかった。

 いつもなら、されこうべを抱いていると気分が落ち着く。だからそのいつもに則り、燐は一番のお気に入りを太ももに乗せて、暗がりの中で頭蓋の天辺を撫でていた。
「……馬鹿だ」
 帰ってきてからもう何遍もついている溜め息が、また口から漏れ出ていく。止めようと思って我慢していても、しばらくしたら勝手に出てくる。どれだけされこうべを擦ってみても、気分はちっとも晴れない。完全に泥沼状態だった。
「……馬鹿」
 こちらも、もう何度目になるかわからない「馬鹿」を呟いて、巌に後頭部を据えた。自分の長所の一つに、確か楽天家というのがあった気がするんだけどねえ、と内心で嘲る。
 地底には熱くて暑い場所と、冷たくて寒い場所がある。どちらも両極端で、その真ん中は地霊殿とその付近にしかない。
 ここは冷たくて寒い、加えてとても暗い場所だった。
 頭を冷やすにはもってこいなのだが、極度に冷え込む分、次第に頭や感覚が働かなくなってくる。それを承知で、燐はここに来た。頭を冷やすためではなく、自省するために。
 今日のあたいは最低だった。馬鹿丸出しだった。ホント、嫌になる。自分で仕置きの一つでもしておかないと、また誰かを嫌な気分にさせてしまう。
 反省しなきゃ。反省しなきゃ――。
「ここだったんだ」
「――え?」
 悶々と内省していたせいか、おくうが近寄ってきているのにも気が付けなかった。驚いて、持っていたされこうべを落としかけた。
「びっくりするじゃないか」
 心臓も、ばくばくと音を立てて抗議している。
「ごめんね。まさか本当にいるとは思わなかったから」
 おくうは、すぐ隣に腰を掛けた。かと思っていると、もぞもぞと動いて身体を寄せてくる。
「へへ。こうすればあったかいよ」
「あんたねえ。あたいは今、考え事をしてるんだよ。独りで考えたいんだ」
「じゃあ、地霊殿に戻ろう? こんな寒いところにいないでさ」
「別にどこだっていいじゃないか。あたいの勝手だろう? 放っておいておくれよ」
 暗がりなので、そっぽを向く意味はあまりない。それでも燐はそっぽを向いた。相変わらずデリカシーに欠ける子だね、と鼻を鳴らして。
「じゃあ、わたしも勝手にする」
 ばさ、と羽根を打つ音を聞いた次の瞬間には、おくうに抱きつかれていた。あれよあれよという間に彼女の翼に身体を覆われ、くるまれてしまった。
「ちょ、ちょっと」
「お燐が悪いんだからね」
 言って、おくうは更に腕に力をこめてきた。
 ぎゅっと、それこそ人間の女子が持っているような「ぬいぐるみ」とやらにでも抱きつくように。
「痛い、痛いって」
「そんなこと言って逃げようったって、そうはいかないんだから」
 過去、同じようなシチュエーションで幾度となく猫化して逃げてきた実績があるだけに、何を言っても聞き入れてはもらえないだろう。燐は抵抗を諦め、全身から力を抜いておくうに委ねた。
「あれ? 今日はやけに素直だね」
「あんたの馬鹿力に対抗するだけ疲れるさね」
 猫になったところで、翼でくるまれている現状では逃げ道もない。
「……本当に元気ないんだね」
「そう、これっぽっちもね。あたいは今、疲れ果ててるの」
 自由気まま――これこそが全猫共通のモットーのはずなのだが、ここのところ頭も気も遣いすぎて、気力がすっからかんになってしまった。喋るのも億劫に感じる。
「何かあったの?」
「んー……別にぃ」
 烏頭な彼女に、種族の違いによって起きる軋轢の話をしても実りはあるまい。こうやってはぐらかすのが一番だ。伊達に長い付き合いじゃない、おくうの扱いにはちょっとした自信もある。
 と思っていた燐だったが、珍しくおくうが食いついてきて、焦る羽目になった。
「地上に行ってたんだよね? どうしたの、嫌なことでもあった?」
「べっ、別に。大したことじゃないよ」
「嘘ばっか。お燐、嘘つくとよそよそしくなるからすぐわかるもん」
 失念していたが、長い付き合いなのは向こうも同じだ。どうすればこちらが口を割るか、よく心得ている。
「観念して白状しちゃってよ」
「……もう、強引だねえ」
 頭は弱いが、意思は強いのがおくうである。頑なに説明を拒んでも、頑なに問い詰めてくるだけという不毛な追いかけっこが始まるのが目に見えているので、燐は観念して洗いざらい話すことにした。
 火車には、実は火の車という種類がいること。夢の中で変な馬の姿をした獄卒に出逢ったこと。稗田の跡継ぎに斬られそうになったことや、貸本屋で店番をしている小鈴との縁、それにマミゾウとやらの妖しげな化け狸とやりあったことまで、直近に起きた全てを打ち明けた。
 話している途中、おくうはうんともすんとも言わず、じっと聞きに徹していた。途中、あまりにも黙り込んでいるものだから、本当に理解しているのかと怪しんだ。けれど燐としては話すしかなかったし、その間、徐々に心が軽くなっていくのが感じられて、結局最後まで語り切ったのだった。
 その果てに、おくうの口から出てきた台詞がこれである。
「お燐にも悩みがあるんだね」
「いや、そうじゃないだろ」つい突っ込んでしまった。「あんたにも悩みがあるんだね、ってあたいが言うならともかく」
 まともな返答を期待していたわけではない。だが、それをおくうに言われてしまうとは。抱き込まれていなかったら、脳天に手刀の一発でもくれてやるところだ。
「でもさ」
 突っ込みを気にもしていないおくうが、
「それって結構、贅沢な悩みだよね」
 などと言った。
「なんでさ」
「だってお燐、わたしたち妖怪だよ? それも地底に棲んでる妖怪だよ?」
 人間とお友達になりたいだなんて。
「……別に、友達なりたいってわけじゃないんだけど」
「お友達にならなくてもいいなら、悩むことなんてないじゃない。お燐はお燐らしく、これまで通りに猫車で死体運んで、お気に入りの怨霊とお話しして、ここのみんなとのんびり暮らせば」
 おくうにしては、正鵠を射た意見だった。
 そうなのだ。別に無理をおして地上に出て行く必要などない。彼女が言うように、これまで通り地底で暮らしていればよい。ここから出なければ、地表に住まう者との諍いも起きないのだから。彼らに冷たい目で見られることもないのだから。
「でも」燐は目一杯に息を吸った。「それじゃあ、悔しいじゃないか」
 何でなのさ。何であたいらが悪者にされなきゃいけないのさ。あたいはただ、嫌われたくないだけなのに。種族の垣根なんて気にせず、みんなと和気藹々としていたいだけなのに。
 悔しい――妖怪というだけで蔑まれることが。
 悔しい――地底に住んでいるというだけで疎まれることが。
 けれど、それと同じくらい、こうも思ってしまう。
 あたいが人間だったら? 妖怪に殺されるかもしれないと危ぶむだろうか。地底の妖怪と聞いて、どす黒い感情を滾らせるだろうか。
「地上のみんながしている『普通』を、あたいがやったらいけないのかい? それが贅沢だっていうのかい?」
 小鈴の笑顔が、脳裏でぱっと咲いた。
 何を言っているんですかお燐さん。あなた、とてもいい方じゃないですか。仲良くしましょうよ。
「何も友達になろうっていうんじゃない。ただ長閑にお喋りしたいっていうだけのことが、そんなに贅沢なのかい?」
 マミゾウのしけた面がぼんやりと浮かんできて、小鈴の笑顔を掻き消した。
 不完全な変化しかできないお前さんは、よからぬ噂を撒き散らすだけじゃて。近寄るな、距離を置け。
「そもそも、何で人間と友達になりたいって思っちゃ駄目なんだよ。妖怪だからって、危害を加えたりなんて絶対にしないのに」
 まくしたてたせいか、顔が上気している。
 ほんの少しだけ沈黙が挟まって、それからおくうが言った。
「やっぱり、お友達になりたいんだね、その小鈴っていう子と」
「いや、だからそうじゃなく、」
「お燐、今、自分の口で友達になりたいって言ったじゃない。それに、仲良くなりたいってことは、つまりはお友達になりたいってことじゃないのかな?」
「……あたいに訊かれても」
 困る。
 まさか自分が生者に対して、これほど熱を上げるなど思ってもみなかったから。死者にしか興味なかったはずなのに。
「わたしはその小鈴って子、見たことないけど。きっといい子なんだろうね。お燐が困っちゃうくらいに」
 でもね――
「やっぱりそれは贅沢だよ。だってわたしたちは妖怪で、人間に怖がられることで生き存えているんだから」
 燐は無意識のうちに身じろいでいた。おくうとは思えぬ声音、発言であったからだ。
「ちょっと前に、さとり様が教えてくれたんだよ」
 最近、お燐の様子がおかしいと。己が火車であることを忘れていっているようだと。
 また、おくうの両腕に力がこもった。
「ねえお燐、人間になりたくてなりたくて、どうしてもなりたくて頑張った妖怪のお話、知ってる? 知らないよね? だってさとり様は、わたしにしか教えてくれなかったはずなんだから」
 その妖怪はね、と穏やかな声調で語り出した。
「山の中で暮らしていたんだけど、人間に追われて殺されかけたんだって。弓矢で背中を射られて、今にも死にそうだったんだって」
 それを助けてくれた男がいた。彼は、襲ってきた人間と同じ種族だとは思えぬほど献身的な介抱をしてくれた。
「その妖怪は犬と人間がごっちゃになったような姿をしていたらしいんだけど、女の子だったんだよ」
 お決まりのパターンだよね、とおくうは笑う。
「でも、怪我が治るとすぐ、男の人が出て行ってくれってお願いしたらしいの。妖怪を匿っていると他の人に知られたら、殺されちゃうからって」
 その場はどうしようもなく、犬妖怪は大人しく退散した。だが、一度芽生えた恋心はそう簡単に解消されることはなく、ずっと彼女の心の中で燻り続けた。
「彼女、苦しくてもずっと一人で耐えてたみたいなんだけど、結局どうにもならなくて。妖怪の仙人さんのところに相談しに行ったんだって。そうしたら、その仙人さんが名案をくれたんだよ」
 人間になれる法術がある、それを試してみるか、と勧めてきたのだとか。
 胡散臭さが漂ってきたね、と燐は眉根を寄せた。
「自力じゃあどうしようもないところまできてたからね、その子も。だから頷いちゃった」
 ――人間になれるのならば。人間になって、彼と一緒に暮らせるのならば。
「でもね、ちゃんと人間になれたんだよ。嘘みたいだけど、本当に人間になれたんだって」
「じゃあ、ハッピーエンドだったのかい?」
「そんなわけないじゃん」
 ぴしゃりと言われ、燐は口をつぐんだ。
「続きがあるよ。その子、人間にはなれたけど、人間としては生きていかれなかったの」
 人間になれた。私、人間になれたのよ。
 気が狂わんばかりに彼女は喜んだのだろう。だからこそ、命の恩人の元へ、愛する彼の元へとまっしぐらに駆けた。ひ弱な人間の女の脚で。
「彼女は、男の人が喜んでくれると思っていたんだろうね。人間にさえなれれば、一緒に住めるようになると思っていたんだろうね」
 ところが、そうはならなかった。
「話を聞いた彼、どうしたと思う?」
 あまり想像を働かせたくはなかったが、一応は考えて答えた。
「突っ張り返したのかい?」
「そんなぬるくないよ」
 話し疲れたのか、はぁ、とおくうは溜め息をついた。
「喜んだふりをしたんだってさ」
「……というと?」
「一度喜んで見せて、その子がすっかり信じ切ったのを確認して」
 ――ここまで遠路遙々、さぞ疲れたろう。ささ、粗末だがこれで横になってくれ。
「そうやって寝床を提供したの。彼の言った通り、彼女は遠いところからずっと走りっぱなしだったから、言葉に甘えて眠っちゃったんだよ」
 それがまさか、悲劇に繋がろうなどとは微塵も思わなかったに違いない。誰だって、信じている相手には無防備になるものだ。
「その晩、彼は家からそっと抜け出して、仲間のところに駆け込んだの。で、全てを打ち明けた。最初から最後まで、あますところなく、ね」
 その先は、聞かなくても大体想像がつく。けれどおくうは、語るのを止めなかった。
「そうしたらどうなるかくらい、普通ならすぐにわかるものだと思うけど、彼は違った。頭パーだったと言っちゃってもいいのかもね。だって、真剣に相談しに行ったつもりだったみたいだから」
 ――実は妖怪を助けたことがあるんだけど、その子が人間になったっていうんだ。本当だとも。どこからどう見ても人間にしか見えないって。なあ、どうしたらいいと思う?
 彼は彼なりに、心底どうしたらいいのかわからなかっただけだ。身よりもなく、細々と一人で生きてきたから、頼れるのは仲間だけだった。
 おくうの指摘通り、頭が鈍かったからこそ、短絡的な行動をとったのだろう。それがいけないことなのだと、判断もつかなかったのだろう。妖怪がいるとバレたら殺されると自分の口で話していたにも関わらず、混乱しきっていてそれすらも忘れてしまっていたのだろう。
 だから悲劇が起きた。
「仲間はみんな男だったらしくて、彼は袋だたきにあったみたい。災いを持ち込むとは何事、って感じかな。で、半殺しにされて動けなくなって」
 その間に、仲間達は武器を持って彼の家へ押しかけた。凶行はすぐに始まった。
「妖怪ならいさ知らず、ただの人間だからね」
 棒で殴られるだけでも、いともたやすく死に直結する。それを何人もの男に代わる代わるやられたのだから、生きているはずがない。
「結局、その子は死んじゃったんだけど。その仲間達の捨て台詞が酷かったの」
 ――この犬畜生めが。
「ねえお燐」
 翼がはためき、黒一色だった視界が転じて色を取り戻した。おくうは完全に翼を畳んだようだ。けれどまだ、腕は放してくれない。
「人間の、妖怪に対する認識なんてこんなものだよ? さとり様だってよく言ってるじゃない。人間なんてロクでもない者ばっかりだって」
「聞いてるけどさ」
「そんな相手と、どうして仲良くなりたいのかな? わたしにはわからないんだけど」
 怒っている、というわけではない。彼女は本当にわからなくて、でも親友の心を理解したいからと、当惑しつつも切実に問うている。
 それが、萎えた燐の心を励ました。
「おくうはさ、もちろんさとり様のこと好きだろ?」
「聞くまでもないんじゃない?」
「だろうさね。でも、さとり様を好きな人間なんて、いると思うかい?」
「いないと思う」
 勝手に心の中を覗いてくる相手を、不快に思わない人間がどこにいよう。
「そうだろうとも。じゃあさ、さとり様を好きな妖怪って、いると思うかい?」
「うーん……」
 軽く訊いたつもりだったのだが、おくうは存外に悩んだ。
 うんうん唸って、結局は「いないかもしれない」と硬い声で返事をした。
「そういうことだよ」燐はおくうの手甲を、その上から手で覆った。「人間と妖怪だけじゃなくて、妖怪同士でも仲の悪いのはたくさんいる。違うかい?」
「それはそうかもしれないけど」
「だったら、人間と妖怪は相容れない、なんて考え方はよした方がいいと思うんだけどねえ」
 妖怪のことを畜生扱いする者もいれば、家族のように大切に想っている者もいる。それだけのことじゃないか。何も難しく考えなくたっていいんだ。
 好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。どちらが正しいとかじゃないんだ、こういうのは。
 ぱっと目の前が開けたような気がした。眼界を妨げていた濃霧が、一斉に退いて晴れ渡ったかのような爽快感がある。
 ところが、おくうは賛同してくれなかった。寄越してくれた声は硬いままで、いつもの陽気さは皆無だった。
「お燐、それは違うよ」
「へ?」
 間抜けにも、燐はそう漏らしていた。
 こんなにも確固たる断絶の意志を、おくうに示されたことは初めてだったから、聞き間違えかと思ったのだ。
「さっきの話は、そういうことが言いたかったんじゃないよ」
「ど、どういうことだい?」
「やっぱりお燐、変わっちゃったんだね」
 変わっちゃったんだね? は、何が?
「完全な妖怪の心を持ってたら、すぐにわかることなのに」
「だから、なんのこと? はっきり言っておくれよ」
 おくうがようやく腕から力を抜いた。
 暖かな彼女の体温が背から離れていく。周りの冷気が、すぐに熱を奪いにくる。
 燐はおくうの方を振り返った。
 おくうは情けなく眉を垂らし、肩を垂らしている。その肩にくっついた、だらりとぶらさがる両腕が、まるで人形の腕のように見えた。
「さっきの話はね、人間の浅ましさを――どうしようもなさを物語っているんだよ」
 ねえお燐、本当にわからないの? わからなくなってしまったの?
「ねえお燐。わたしたち、どうやって妖怪になったのか覚えてる?」
「そんなの、当たり前じゃないか」
 忘れるはずがない。二人で乗り越えてきた苦難の日々を、どうして忘れられるだろう。
「ちゃんとした本物の妖怪ってね、人間から生まれるらしいよ。人間の心から生まれるんだって」
「それくらい知ってる」
「だよね。妖怪なら常識だもんね。だからさお燐、これも簡単なお話なんだよ」
 モノから成ったのではない、純粋なる妖怪は、人間の心の裡にこびりついている闇から――欲望から生まれる。それが何を意味するか。
「人間の黒い感情は、わたしたちよりも遙かに強いってこと。仲良しになるとか、友達になるとか。そんなレベルの話じゃないんだよ」
 想念だけで化け物を生み出せてしまうほどに強い人間達の黒い感情。それを全ての人間が、生まれた瞬間から内包している。心という底なし沼の中でたゆたう汚泥に、その一切を包み隠し込んで。
 妖怪はどうだ?
 妖怪は、いわば彼らから吐き出され、具現化されたというだけの生き物だ。故に彼らの心の深さよりも大きくなることはない。容れ物から溢れ出てしまうくらい大きくなるなんてことは、決してないのである。
 どちらがより危ない生物なのか。どちらがより歩み寄れない生物なのか。先ほどの話は、それをわかりやすくお伽噺にしているだけなのだ。
「だからね、お燐。元に戻って欲しいな。今ならまだ間に合うよ。人間なんてわたしたち以上に汚い生き物なんだから。裏切る生き物なんだから」
 わたしたちが妖怪になれたのも、彼らの黒くて暗くて、悪意にまみれた汚い魂があったからじゃない。そのことを忘れちゃいけないよ。
「、っ」
 でも、と自分では言ったつもりだった。けれど声にはならなかった。燐は出てこなかった言葉を呑み込み、反論を取りやめた。何を言っても、おくうを説得できそうになかったから。自分を納得させられそうにもなかったから。
 ――でも、おくう。それじゃあ、小鈴の心も穢れているというのかい? 表に現れてこないだけで、深層では真っ黒な怪物が、汚泥の中でまどろんでいるとでもいうのかい?
 わからないよ、おくう。あたいにはわからない。さとり様のように心が読めるわけじゃないからさ。

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