日本人はなぜ、人型二足歩行のロボットに憧れるのだろう。
古くは前世紀、昭和の御世から連綿と受け継がれる伝統芸能。私と蓮子がかつて暮らしていた二〇八〇年代においてもなお、ロボットアニメと巨大ロボットに乗る特撮ヒーロードラマは連綿と創られ続けた。
それは結局、二〇八〇年代においてもなお精巧なヒト型アンドロイドが一般に普及することはなく、二足歩行ロボットが戦争に投入されたり重機として使用されたりもせず、夢の領域のままであり続けたからなのだろう。自意識を持つロボットは実現せず、シンギュラリティは到来しないまま、鉄腕アトムの誕生日を通り過ぎること八十年。ドラえもんの誕生は二十三世紀に更新されたのを私と蓮子は記憶している。
だとすれば――今、私たちがいるこの幻想郷の、もう少し未来には、人型二足歩行ロボットが闊歩していたりするのかもしれない。科学の夢が生んだ、忘れられた幻想として。
想像すると、それは少しばかり、もの悲しい光景なのかもしれない。人類滅亡後の世界に取り残されたロボットというありふれたビジョンよりも、あるいはずっと。
さて、今回の記録は、幻想郷の歴史に記録された異変でもなければ、博麗の巫女が解決に動いた騒動ですらない。遊惰な日常にほんのちょっとのスパイスを与えた程度の、酒の席の笑い話のようないくつかの出来事の集合体――表向きには、そういうことになろう。
それゆえ、この記録に記す物語を端的に要約することは難しい。言うなれば今回の記録は、読者諸賢にとっては完成図のないジグソーパズルのようなものになるだろう。
それを繋ぐのは、もちろん我が相棒たる誇大妄想の名探偵、宇佐見蓮子である。
我らが名探偵の頭脳が描き出す、推理という名の誇大妄想とは――。
霧の中にそびえ立つ魔神!
森の中にうごめく巨人!
灼熱の地獄から噴き上げる間欠泉!
最凶の妖怪、太歳星君の影!
いま、幻想郷に最大の危機が迫る!
「これが私たちの切り札――その名も、非想天則!」
――CAST IN THE NAME OF GOD, YE NOT GUILTY.
「非想天則、アクション!」
さあ読者諸賢よ、常識に囚われない我が名探偵や助手とともに、いざ立ち上がれ!
そして、超弩級ギニョルの謎を追え!
第10章 非想天則編 一覧
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ワクワク
メリーさん楽しんでいますにぇー