私たちが幻想郷にやって来て、里に《秘封探偵事務所》を開いて、一年が過ぎた。
気付けばあっという間である。元の世界、元の時代に戻る術が未だ見つからない以上、向こうで私たちがどういう扱いになっているのかは知るよしもないが、2080年代の京都の大学生だった私たちが、いつの間にかすっかり幻想郷での暮らしに馴染んでいる。
もちろん、文化や技術の水準の異なる世界での生活には、様々な紆余曲折や困難があったけれども、そのディテールを細々と書き連ねたところで、この世界の住人にはさほど面白い話にはなるまい。快適な科学世紀の生活に慣れていた私たちにとって、描写していない部分で様々な苦労があったことを推察していただければ幸いである。
この記録はあくまで《秘封探偵事務所》の活動記録であるから、記すべきは探偵事務所としての活動であり、我が相棒、宇佐見蓮子の名探偵ぶりであるからして。
しかし、名探偵も事件に関われなければ、その能力を発揮することは叶わない。
そういう意味で、異変に巻き込まれやすい体質、というものがもし存在するとすれば――それは私たち秘封倶楽部にとって、ありがたいことなのか、それとも迷惑なことなのか。
個人的には、命の危険に晒されるのは何度も体験したいことではないが、相棒の好奇心と頭脳を満足させるという意味では、ありがたいことなのかもしれない。
事務所の宣伝にもなる――かもしれないわけだし。
さて、異変と言っても、巷間に異変として知られるものと、そうでないものがある。
紅霧異変や春雪異変が前者だとすれば、これから語る異変は後者ということになるだろう。
即ち――《三日置きの百鬼夜行》と称された異変のことだ。
読者諸氏――殊に里の住民の方々には、そもそもそんな異変が起きていたのか、と訝しむ向きがあろうかと思う。里にも影響の出た紅霧異変や春雪異変とは異なり、この《三日置きの百鬼夜行》は、異変としての名称がないことが示すように、この異変は里に大きな影響を及ぼすことはなく、そもそも博麗霊夢が〝解決〟したのかどうかすら曖昧である。
であるから、まずは軽くこの異変の概要について説明せねばなるまい。
とはいえ、話はごく単純だ。博麗神社において、三日ごとに宴会が繰り返された――要約すれば、ただそれだけのことである。幹事を務めたのは主に霧雨魔理沙であるが、もちろん彼女が異変の首謀者ではないし、まして博麗神社のマッチポンプでもない。
異変の首謀者の名は、伊吹萃香。
忘れられた種族――鬼の少女だ。
宴会が日常である幻想郷で、宴会が繰り返されることの、どこが異変なのか――その答えは、この記録を読んでいただくことにしよう。
それは即ち、私たち《秘封探偵事務所》が挑んだ、この異変の謎についての物語だ。
伊吹萃香はなぜ、三日置きの宴会を繰り返させたのか。
幻想郷から去ったはずの鬼の彼女は、なぜ再び幻想郷に現れたのか。
そもそも、鬼という種族はなぜ、幻想郷から姿を消したのか。
――全ての答えは、ひとつの謎に収斂する。
即ち、かつて人間の最大の敵であった、鬼という種族そのものについて――。
もちろんこれもまた、今更断るまでもないが、幻想となった与太話のひとつである。
これを読まれている方は先刻ご承知とは思うが、信じるか否かは、貴方次第だ。
それでも良ければ、第三の物語を私は語り始めよう。
三日置きに繰り返された宴会騒ぎを引き起こした、孤独な百鬼夜行の物語を――。
気付けばあっという間である。元の世界、元の時代に戻る術が未だ見つからない以上、向こうで私たちがどういう扱いになっているのかは知るよしもないが、2080年代の京都の大学生だった私たちが、いつの間にかすっかり幻想郷での暮らしに馴染んでいる。
もちろん、文化や技術の水準の異なる世界での生活には、様々な紆余曲折や困難があったけれども、そのディテールを細々と書き連ねたところで、この世界の住人にはさほど面白い話にはなるまい。快適な科学世紀の生活に慣れていた私たちにとって、描写していない部分で様々な苦労があったことを推察していただければ幸いである。
この記録はあくまで《秘封探偵事務所》の活動記録であるから、記すべきは探偵事務所としての活動であり、我が相棒、宇佐見蓮子の名探偵ぶりであるからして。
しかし、名探偵も事件に関われなければ、その能力を発揮することは叶わない。
そういう意味で、異変に巻き込まれやすい体質、というものがもし存在するとすれば――それは私たち秘封倶楽部にとって、ありがたいことなのか、それとも迷惑なことなのか。
個人的には、命の危険に晒されるのは何度も体験したいことではないが、相棒の好奇心と頭脳を満足させるという意味では、ありがたいことなのかもしれない。
事務所の宣伝にもなる――かもしれないわけだし。
さて、異変と言っても、巷間に異変として知られるものと、そうでないものがある。
紅霧異変や春雪異変が前者だとすれば、これから語る異変は後者ということになるだろう。
即ち――《三日置きの百鬼夜行》と称された異変のことだ。
読者諸氏――殊に里の住民の方々には、そもそもそんな異変が起きていたのか、と訝しむ向きがあろうかと思う。里にも影響の出た紅霧異変や春雪異変とは異なり、この《三日置きの百鬼夜行》は、異変としての名称がないことが示すように、この異変は里に大きな影響を及ぼすことはなく、そもそも博麗霊夢が〝解決〟したのかどうかすら曖昧である。
であるから、まずは軽くこの異変の概要について説明せねばなるまい。
とはいえ、話はごく単純だ。博麗神社において、三日ごとに宴会が繰り返された――要約すれば、ただそれだけのことである。幹事を務めたのは主に霧雨魔理沙であるが、もちろん彼女が異変の首謀者ではないし、まして博麗神社のマッチポンプでもない。
異変の首謀者の名は、伊吹萃香。
忘れられた種族――鬼の少女だ。
宴会が日常である幻想郷で、宴会が繰り返されることの、どこが異変なのか――その答えは、この記録を読んでいただくことにしよう。
それは即ち、私たち《秘封探偵事務所》が挑んだ、この異変の謎についての物語だ。
伊吹萃香はなぜ、三日置きの宴会を繰り返させたのか。
幻想郷から去ったはずの鬼の彼女は、なぜ再び幻想郷に現れたのか。
そもそも、鬼という種族はなぜ、幻想郷から姿を消したのか。
――全ての答えは、ひとつの謎に収斂する。
即ち、かつて人間の最大の敵であった、鬼という種族そのものについて――。
もちろんこれもまた、今更断るまでもないが、幻想となった与太話のひとつである。
これを読まれている方は先刻ご承知とは思うが、信じるか否かは、貴方次第だ。
それでも良ければ、第三の物語を私は語り始めよう。
三日置きに繰り返された宴会騒ぎを引き起こした、孤独な百鬼夜行の物語を――。
第3章 萃夢想編 一覧
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孤独な百鬼夜行っていい方が好き。萃夢想は確か萃香が最終的には、再び鬼を幻想郷に呼び戻す筈の異変でしたが、鬼は誰も戻ってこなかったって寂しい感じに終わってた記憶があります。あと操作が難しい。
鬼といえば茨歌仙にも謎あり、東方ってひっそりと謎だらけかも