「完璧だね、お燐」
「ああ、おくうのおかげさね」
燐とおくうは、あるものを目の前にして感動に浸っていた。
「なんだかんだ、結構時間かかっちゃったね」
「ちょっと凝りすぎたかもしれないねえ」
でも、と燐は尻尾をうねらせる。「これくらい豪勢な方が、見栄えも良くないかい?」
「見栄えはいいかもしれないけど。重くなりすぎじゃないかな」
「なーに、心配には及ばないよ。一体どれだけ長いこと死体運びをしていると思ってるんだい」
「そっか、それもそうだね」
おくうが気の抜けた笑顔になる。これだけ一生懸命作って「やっぱ駄目だコレ」とならなくてほっとしているのだろう。仕事の合間にとはいえ、制作に一ヶ月もかかっているから。
「あとは乗り心地がどうかだけだね」と言って、燐はそれに手をかけた。お手製の新作猫車である。
一月前、様々なことに悩み苦しんだ。
妖怪としての自分、人間との関わり合い、火車という業深き存在について等々。脳が蕩けてしまうほどに悩み、考え抜いた。
で、燐なりに出した答えの一つがこれ。
猫車を使った運び屋の開業だ。
「やっぱ、乗車第一号はおくうだよね」
初めて作った猫車のときもそうだった。
両足を畳まないと乗れないような小さな車だったけれど、乗車のいの一番はおくうだった。さとりではなく。
「今回のは広くていいね」
側面に付けたドアを引き、おくうは新しい猫車へと乗り込んだ。
前回とは違い、今回は二人まで乗れる。しかも椅子付きである。快適性は遙かに向上しているはずだった。
「乗せるのは死体じゃないからねえ」
「死体も、これくらい広くて快適だったら嬉しいかもね」
「死んでるヤツを喜ばせてどうするんだい」
燐は笑いながら、ドアを閉めて簡易の鍵をかけた。
「それじゃあおくう号、発進だね」
「おくう号って」
ぷっと吹き出したおくうが、身をよじってこちらを向く。燐はすでに猫車の押し棒を掴んでいた。
「いやあ、名前つけとかないと呼びにくいじゃないか」
古い猫車も、まだまだ使える。死体運びはあちらを使う予定だ。
「じゃあ、おくう号にお燐号だね」
「自分の名前をつけるのは恥ずかしいんだけど」
「駄目だよお燐。人様の名前を使うんなら、自分の名前も使わなくちゃ」
「そうさねえ」
まさか死体運び用の猫車に、主人の名前を付けるわけにもいくまいし。
「まあ、深い意味があるわけでもないし、それでいいか」
「そうそう、それでこそお燐だよ」
さ、出発しよう。
おくうの一声を受けて、燐は手に力をこめた。
「それじゃあ、出発進行!」
押し初めの感触としては、今までの猫車より倍近く重たかった。図体も倍近くになっているから当然なのかもしれないが。
でも、と燐は奥歯を噛んで推し進めた。
これくらいの重さでめげていたら、仲間だと言ってくれた牛頭馬頭に申し訳が立たない。たとえ夢の中――自分の心の裡を映しただけの世界の中――であったとしても、彼らは燐を一匹の火車として認めてくれた。その期待を裏切ってはいけない。彼らの足を引っ張ってはいけない。たとえ火車ではなくなろうとしているとしても。
ごろごろと、地底の悪路を車輪が踏破していく。小石を踏むたびに、おくうの身体が上下する。
「酔ったりしないかい?」
心配になって聞いてみると、
「ううん、とっても気持ちいいよ」
と返ってきた。
「そうかい。ならもうちょっと速度あげるよ」
更に力んで推し進めていく。助走もついて、もうほどんど駆け足になっていた。
風におくうの髪がさらわれる。妖怪に成り立てのときからずっと変わらぬ、艶やかな黒髪がなびいている。その後ろ姿を、燐は目を細めて見つめた。
そうだったね。あのときもこんな感じだったね。嬉しくて嬉しくて、力尽きるまでこうやって駆け回っていたね。
あれからもう何十年になるだろう。これからあと何十年こうしていられるだろう。燐は今ほど、時間というものを気にしたことはなかった。
喧嘩したり言い合いになったりしても、これまではすぐに仲良しに戻れた。有り余る時間が味方してくれたから。
でも、死はそこいらに転がっている。これはおくうが騒動を起こしたときから思っていたことだが――妖怪だからって、死なないわけではない。特にあたいたちは、もとはただの鴉と猫なのだから。八雲紫のような、生粋の妖怪とは違うのだから。
人間も、こうやって時間に押されながら生きているのだろう。しかも彼ら、彼女らは妖怪よりもずっと少ない時間の中で生きている。だから煩悩も多いのだろう。願い事も多いのだろう。軸も定まらず、人生に彷徨ってしまう者も多いのだろう。
時間は残酷だ。時間こそが、生ける者を等しく滅ぼす宿敵なのだ。不死ではない限り、絶対に勝てやしない呪詛なのだ。
でも、だからこそ、その呪いをかけられているあたいたちは、無駄に生きてちゃいけない。だらだらとしている暇なんて、本当はないはずなんだ。一分一秒を惜しまないと、こうやって大切な人たちと一緒にいられないのだから。本の――物語の中の主人公たちだって、そうやって足掻きながら生きていたじゃないか。
妖怪?
人間?
そんなのは関係ない。要はどう生きるかが問題なだけで。人間に好かれたいなら、人間に好まれる生き方をすればいい。妖怪であることを誇りにしたいのなら、誇りにできるような生き方をすればいい。それは人それぞれだ。
あたいは欲張りだからどっちも欲しい。だからどっちも頑張るだけさね。妖怪として生きて、人間とも仲良くなりたい。おくうと一緒に生きて、小鈴とも一緒に生きたい。そのために頑張るだけさ。
「さあ、もっともっと速度あげるよ!」
「きゃーっ、お燐さいこーっ!」
はしゃぐおくうを乗せて、新しい猫車がどこまでもゆく。生き急ぐかのように、前へ前へと加速しながら。
「お主、それは単なる開き直りというものじゃぞ」
人間姿のマミゾウが、新型猫車に触れながら溜め息をついた。
「別にいいじゃないか。乗りたくなきゃ乗らないだけだろ」
「そりゃそうかもしれんが」
この短期間に何があったんじゃ、と疑心に満ちた目で見てくる彼女に、燐は素知らぬ顔をした。代わりに、向かいにいる小鈴に話を振る。
「小鈴はどうだい? これ、駄目だと思うかい?」
「どうでしょう」小鈴は苦笑いだ。「こういった試みはあまり見たことがないので」
「リグルが虫のお知らせサービスとかいうやつをやってるみたいだけど」
事前に調べてみた限り、内容がおぞましさ満点だったので参考にもならなかったが。
「人に限定しなければ、需要はあると思いますけどね」
「え?」
「運ぶのを人のみにするんじゃなくて、荷物とかも承ってくれるなら結構需要あると思うんですよ」
本とかも、まとまると結構な重さがありますし、と小鈴。
「おお、それはいい考えじゃのう。どうせ『運び屋』と名乗るなら、荷物も運んでしまえ」
横から口を挟んでくるマミゾウの声が弾んでいる。こういった話で盛り上がるあたり、商売人というのは本当なのかもしれない。
「そうか。はなから人を運ぶことしか考えてなかったよ」
「三人寄れば文殊の知恵、というやつじゃな。問題は、利用したい人がお燐に連絡を取る手段がないということじゃが」
う、と燐は詰まった。
実はそのことについてずっと考えていて、けれど答えが出せないままに今日を迎えてしまったのだった。
死体ならかっ攫っていくだけだが、人を運ぶとなると連絡手段がいる。わかってはいるが、名案がなかった。
「うーん、伝書鳩みたいなのがいればいいかもしれませんけどね」
「伝書鳩か。現実的ではないのう」
そもそも、いちいち出先に筆など持っていかないだろう。伝書鳩に託す手紙が書けないのでは話にならない。
「あ、でも、券か何かを予め配っておいて、それを伝書鳩に渡せばいいのではないでしょうか」
それなら筆なんかも要らない。
だがその案は、マミゾウに軽くあしらわれた。
「それだけだと居場所がわからんじゃろ。それに伝書鳩を一人ずつ配るわけにもいかんじゃろうし」
「だよねえ」
もしくはそこらじゅうに鳩を配備するかだが、彼女の言う通り現実的ではない。糞の問題もある。
「難しいねえ。確かに突っ立ってるだけじゃ駄目そうだ」
燐としては、起点を決めておいて、常にそこから運んでいくというイメージを持っていたのだが。問題外だった。
「お、閃いたぞい」
ぱちん、とマミゾウが指を鳴らす。
「お主、仲間を集めれば良いんじゃ」
「仲間?」
「そう、仲間。猫又は難しいかもしれんが、野良猫ならそこいらにおるじゃろ」
「そうさねえ」
あまりコンタクトをとったことはないが、少なくとも犬より数はいるはずだ。
「で、お主は猫語がわかる。じゃからその猫たちに協力してもらえばいいわけじゃ」
しん、と場に沈黙が降りた。
燐はマミゾウを、マミゾウは燐を。小鈴はマミゾウを見つめたまま膠着している。
やがて、
「――いいですね、それ」小鈴が真顔で頷く。
「現実的だね」燐も真顔で頷いた。
「そうじゃろう。人里のみの運行なら支障はなかろうて。猫たちも、縄張の関係である程度は散らばっているじゃろうし、日永昼寝しているようなやつもおるじゃろうからな」
どうじゃ、と偉そうに胸を張るマミゾウに、燐は嫌味を言うどころか、ただ感心するばかりで何も言えなかった。
「でも、猫って人間の言葉わかるんですか?」
小鈴が小首を傾げると、髪留めの鈴がちりんと鳴った。
「ああ、それは大丈夫。ちゃんと分かってるから」
「そうなんですか。ちゃんとわかってるわけではないと思ってたんですけど」
「そりゃあ難しい話とかは理解できないけど。大体のことはわかってるよ」
だから狡賢いと言われるようなこともするわけなんだけどね、と燐は心の中で笑った。
「じゃあ問題ないですね」
あとはやるだけですね。
そう言った小鈴の言葉を遮って、
「まだまだじゃよ。まだやらねばならぬことがある」
人差し指を突き立てたマミゾウが、愉快そうにくつくつと笑った。
サービス開始当日の空は、雨こそ降らねど、相当に分厚い雲に覆われていた。まるで天が、燐の挑戦を見たくはないとばかりに灰色の蓋をしているかのようだった。
「雨は降らんじゃろうが、幸先がいいとは言えんのう」
恨めしそうに言うマミゾウに、燐は強がりで返した。
「天気なんて関係ないよ。晴れの日があれば雨の日だってあるんだから」
言いつつ、胸中に苦いものが滲んだ。
雨のことなんて全然考慮していなかった。この猫車、雨避けが要るんじゃないか?
「そうですとも」
燐の強がりに、鴉天狗であり記者である射命丸文が呼応した。「曇天だからって、客足が遠のくはずがありません」
うちが広告を配ったんですからね、とにやつく。
「広告ったって、号外みたいなもんをばらまいただけじゃろう」
「失敬な。新聞と広告の威力を甘く見てはいけませんよ」
「まあ、言わんとすることはわからんでもないが」
燐の新規事業を前に、マミゾウが言った「やること」の一つが宣伝だった。新しいことをやるのだから、それなりに宣伝せねば客が寄りつかないだろうと踏んだのだ。
「それにほら、こののぼり。美しいデザインだとは思いませんか」
猫車に刺さったのぼりの棒を掴んで、布生地を引っ張る文。生地には「なんでも運びます 運び屋 お燐便」と流れるような文体で書かれている。これも彼女が作ったものだった。
「普通な感じじゃがなぁ」
「あなたに書かせたら、もっと太くてみっともない感じになりますよ。絶対に」
勝ち気な発言だが、これこそが記者・射命丸文の地である。それをマミゾウも理解しているから、溜め息一つで済ませたのだろう。
「この際、わかればなんでもいいわい。その調子で記事も派手に書いてくれよ」
「任せて下さいよ。こんな面白いイベント、そうそうありませんからね」
異変以外で、と付け足して、文は首から提げているカメラを手で擦った。彼女は、燐のことを記事にするために来ているのだった。
「あと一時間か。どれくらい集まるかのう」
一同は人間の里の集会場に集っていた。
とりあえず今日一日はこの集会場は人外――妖精、妖怪等々――の出入りを禁止しており、サービスも人間限定、人の運搬のみとしている。翌日からは妖怪も利用可能で、宅配の方も始める予定だが、今日の結果次第で今後の作戦を練り直さなければならなくなるかもしれなかった。
「みんな、使ってくれるといいですね」小鈴は、心底祈るように言った。
彼女にとっても、今日の試みは大事な勝負所なのだ。
もしこれで燐が人間と打ち解けられるようなら、燐は堂々と鈴奈庵を行き来することができる。こそこそと出入りしなくて済む。それは妖魔本をこそこそと集めている小鈴にとっても、希望の灯になるはずだった。
「こればっかりはやってみんとわからんからのう」
「大丈夫でしょう。うちの広告もありますし、興味本位で来る者も結構いるはずですから」
それに、と文は笑って、
「もし駄目でも、妖怪向けのサービスに限ってしまえば一定の利用客はいるはずですからね」
そうか、と燐も納得した。
残念な結果になっても、サービスとしては活きるのだ。人間との交友という点は諦めなくてはならないかもしれないが、他人の役に立つ、という点だけは叶う。
おかげで、少しばかり張っていた肩から力が抜けた。
それから三十分後、早くも初めての客が現れた。
三人組の老婆たちだった。むろん人間である。
「ちょっと早かったかしら」
「三十分も早いわよ」
「別に大丈夫よね?」
女三人集まればかしましい、という言葉があるが、彼女らはまさにかしましかった。
おかげで初めての客にも関わらず圧倒され、
「おいお燐、客じゃぞ」
とマミゾウに突っ込まれるまで、燐は応対するのも忘れていた。
「い、いらっしゃいませ?」
「何で疑問符がつくんじゃ」
そのツッコミに、老婆たちから歓声が湧いた。
「アンタ、格好いいねえ」
「あたしたちと一緒にどう?」
「ええ? こっちが押すんじゃないの」
彼女らはマミゾウの裾を引っ張ったり、背中を叩いたりと賑やかだ。おかげでマミゾウは困り果てている。
「いや、押すのは儂じゃなくて、こっちのお燐というやつなんじゃ」
「儂だって」
「渋いねえあんさん」
「うちのじいさまにも見習わせてやりたいよ」
あっはっは、と笑い声が響き渡る。曇天をも吹き飛ばすような、陽気な笑い声だった。
燐も困ってしまって、小鈴の方を向いた。
彼女は、私は関係ありませんとばかりに明後日の方を向いていた。
「三十二組か。上々じゃな」
手にした銭を手で弄びながら、マミゾウがふんと鼻息を吐いた。「最初はどうなるかと思ったが」
最初の客である老婆三人組は、燐たちが必死に「二人用だ」と説明しても聞き入れてくれなかった。うちらは小さいから、二人も三人も変わらないという言い分だ。ちゃんとお代も払ってくれたので無碍にもできず、結局は三人まとめて乗せたのだった。
「そうですね」
小鈴は乾いた笑みを貼り付けている。
曇天の下、本日現れた客たちが個性的な人物ばかりで疲れきってしまったようだ。
「あとは記事ができるのを楽しみに待つばかりじゃのう」
文は、一足先に妖怪の山へと戻っていた。さっそく記事作成に取りかかるという。今は彼女を抜いた三人だけが、鈴奈庵のテーブルを囲んでいるのだった。
「どんな記事になるのか心配だよ」
というより、どんな写真を使われるかが心配だった。
二十組目あたりから体力が尽きかけていたのだが、その間も文は容赦なくカメラを向けてきていたので、情けない顔やへばった姿なども隅々まで撮られてしまった可能性が高い。プロの記者である彼女に限って変なものは使わないとは思うが、それでも気が気ではなかった。
「それにしても、本当にこれでよかったのか?」
マミゾウに問われ、燐はすぐに、けれどゆっくりと首を折った。おくうのことだとすぐにわかった。
「仕事だからねえ。しょうがないさ」
どちらにせよ、今日は人外の出入りを禁止にしたのだ。不公平はよくない。小悪魔もそれで諦めたのだし。
それに、どうしても強くは誘えなかった。もし失敗したら、どんな顔をすればいいのかわからなかったから。
「それより、今日は二人ともありがとう。あたい一人じゃ、たぶんこんなにもいい結果にはならなかっただろうから」
「何を言ってるんですか、お燐さん」
小鈴の顔が晴れやかなものになる。「私たち、お友達じゃないですか。友達が困っていたら、助けるのが当たり前ですよ」
「ともだち……」
「そうですよ。私たち三人とも、もうお友達同士です」
「え、儂もか?」
マミゾウが照れくさそうに後ろ髪を掻く。
「違います?」
にっこりと問いかけられて、そうじゃないと言えるほど燐は妖怪ができていない。
「そうさねえ」と二股尻尾を屹立させた。「お友達だ」
「そういうことにしておくかの」
と言いつつ、満面の笑みを浮かべるマミゾウだった。
それからすぐ、燐とマミゾウは鈴奈庵を出た。外はすでに暗く、時刻は七時を回っている。
「今日は充実しておったなあ」
星の出ていない空を見上げながら、マミゾウがぽつりとこぼす。「文ではないが、確かにこんな機会は滅多にあるものではないじゃろう」
「そうさね。あたいも楽しかったよ」
心を砕いていたのが馬鹿らしくなるくらい、人間達は燐に好意的だった。子供連れの家族もいたし、中には「こんな可愛らしい嫁さんが欲しい」と言っていた青年もいたくらいだ。
「これから大変だろうがな」
「それも覚悟の上さ」
こちらがどんなに好意の手を広げても、受け入れられない人も一定数出てくる。妖怪に対する世間(人間)の風当たりはまだまだ強い。運び屋お燐便の利用客が増えれば増えるほど、商敵も攻撃的になってくるだろうし。
「おお、そうじゃ」
たった今思い出した、と言わんばかりの調子だった。「例の歌についてじゃがのう」
「何かわかったのかい?」
期待に胸を膨らませると、
「慈鎮和尚」
「ジチンオショウ?」
「その歌を作った人物じゃよ。それくらいしかわからんかった」
「ええ?」
膨らんだ胸が、みるみる萎んでいく。
「そんな顔をするんじゃない。あとはいくらでも調べられるじゃろ」
小鈴の店にも行けるようになったことじゃしな、とマミゾウがからかうように言う。
「意味がわかったら、儂にも教えてくれい」
じゃあな、と彼女は手を振って闇の中に溶けていった。最後に大きな狸尻尾を露わにして。
「――ちぇっ。みんな格好つけなんだから」
燐は独りごちた。
そんなことを言われちまったら、行くしかなくなるじゃないか、と笑み崩れて。
感想をツイートする
ツイート
A good many vablalues you’ve given me.