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楽園の確率~Paradiseshift.第5章『黒谷返上』   黒谷返上 第1話

所属カテゴリー: 楽園の確率~Paradiseshift.第5章『黒谷返上』

公開日:2018年04月02日 / 最終更新日:2018年03月27日

黒谷返上 第1話
楽園の確率 ~ Paradise Shift. 第5章
黒谷返上 第1話



 しんしんとした空気の中、彼方では鳴り物の音が聞こえる。
 とんてん、ひょろひょろと、拙い和音。子供らのお囃子の稽古であろう。
 全天の数多の星辰が音色につられて瞬き始める前、戌星だけが地上に鋭い光を落とす。
 二重の結界で閉じられた神々と妖怪の箱庭にあってもその輝きは変わらず、南の空から地上に射し込んでいるそれを見た人々の思いも、結界の内と外では変わらない。
 陽が銀嶺の向こう隠れ、昼と夜の混じり合った空と一番星に「夜が来た」と思うのだ。
 しかし夕闇への備えは全く異なるであろう。
 箱庭――幻想郷から見て『外』と言われる世界は、夜を恐れなくなって久しい。陽光よりも遙かに目映い光源すら手にし、天の川すら天頂から消し去ってしまった世界にあっては、夜という物はただの時間のサイクルでしかないであろう。
 しかし幻想郷では全く事情が異なる。
 夜は、魑魅魍魎の跋扈し始めるあやかしの刻。人々は皆、邑に帰っては戸を閉じ、あるいは人里の内に入って門を閉ざす。
 これが幻想郷の人間の日常であり、その時間、その“外”に在れば、命すら危うくなる。
 しかし――

「善八郎(ぜんはちろう)様」
 ここは人里で様々な物品を扱う万屋の大店(おおだな)。手代が店仕舞の準備に動き回るだけで、客足もまばらになった店内。そこで番台に向かう若旦那に、姿無き声が呼び掛ける。
 若旦那と言うのに相応しく、見た目も実に若い。サッパリとした短髪に剃り上げた髭も青く目立たせない、細面ながら切れ長の目をした精悍な青年だ。
 とても商家の跡取りらしくもないゴツゴツした手で走らせていた筆を止めた若旦那、善八郎は、いち時に四周に視線を走らせてから声の主に応じる。
「井三郎か? 人間の姿は無い、穏形(おんぎょう)を解かんか」
 威圧する風な言葉ではあるものの、声音は穏やかなもの。
 これに声の主、井三郎が更に答える。
「いや、実はこれ、つい最近河童から納められた新型だそうなんですが、操作方法が今までの物と違うようでして……」
 彼が「明日の店番はどうしましょう」などと聞いている方の気が抜ける呟きを続け始めたのを善八郎は制し、当初の呼びかけの理由を問いかける。
「わざわざそんな物を用いてまで店頭に来ての用件だろうに、何ごとか」
「失礼。またしても貸本屋の娘です。今日は最近噂の『都市伝説(オカルト)』を追いかけるとか言って、里の外に出たまま今時分も戻らないようでして」
「手勢は?」
「樽良(そんりょう)殿と枝松(えだまつ)が手空きでしたので支度させてます。ご下令頂ければすぐにでも」
 姿こそ見えないが、井三郎は両拳を地に着いて控えている。すぐにでもと言った通り、まさに即応の態勢。
「よし行け」
 善八郎が一拍も置かずに命じると、井三郎も短く「はっ」と答え、こちらも一拍も置かずに気配を消す。
「オカルト……最近は人里の内にも現れたなどという噂もあるが、如何にすべきか」
 そんな噂こそが都市伝説のキモかと善八郎は嘆息し、また帳簿に視線を戻した。

――生来より幻想郷の村邑に住まう人間ばかり、この箱庭のしきたりを知る者ばかりになったはずの現在ですら、今回のような事がままある。二つ目の結界が閉じてから干支もまるまる二回りし、人間も妖怪を恐れつつ世代を重ねた今になっても、だ。
 貸本屋の娘はさておき、斯くの如く黄昏時を過ぎ、あるいは某かの異変が起き、人間が邑や里に籠もるべき時になってもそこに戻らないとなれば、先のとおり命すら危うくなる。
 幻想郷在来の人間とその子孫には最低限の安全が与えられるものと、二つ目の結界『常識と非常識の境界』、博麗大結界の成立に前後して妖怪の賢者らは取り決めた。
 人里はその範疇であるが、今回の他、外に農地を持って散居を為す人間はそこから若干外れる。
 最低限とする境界が人間の集団の暮らしであるのか、それとも整えられた村邑であるのかは、襲う側の胸三寸、咎める側の同じくであるかも知れないが。
 今の善八郎らの働きはその最低限を確かに超えたものである。これは無論、単なる慈善事業などではない。
 そもそも彼らは人間ですらない。かつては鬼が支配し、今は天狗が支配する信仰の山――妖怪の山に属する天狗の一団だ。
 それがなぜ、里の外にまで人間を助けに向かうのかと言えば、里の守りの延長というのが一番の理由である。
 天狗も妖怪の賢者が取り決めた里の守りの一翼を担っているため、これは面子に直接関わる。また他の勢力に付け入る隙を作らない事ともう一つ、陰ながら己らに対する畏怖や信仰を寄せさせるためでもある。
 いずれも最終的には実利に関わる打算からの行為。
 かくて宵闇の中に姿を消した神隠し常習犯の少女は天狗達に匿われ、その親が異常に気付いた頃にはいつも通り、無事に寝床に戻っていたという。

 明けて翌朝。天狗の屯する大店、の往来を挟んだはす向かいの茶屋の軒先。緋毛氈(ひもうせん)を打ち止めた縁台に腰を落とす二人の翁の姿があった。
「それでですね、うちのその番頭さん、文字通りにしばらく姿を消したままになってしまいまして」
 温そうな綿入れを羽織った中肉中背の、白髪がちの髪に柔和な面の如何にも好々爺然とした翁が、昨日の出来事を少し省きつつにこやかに語る。
 それを受けるのは、大寒も過ぎたばかりの季節柄に合った厚手のジャンパーを着込み、ティアドロップ型のサングラスを掛けたオールバックの白髪頭の長身痩身の翁。
 彼は少し眉をひそめてから、白い息も吐かずに答える。
「そいつはすまねぇ、狭山(さやま)屋さん。若ぇ奴の説明不足だったんだろう。手間掛けたな」
「いえいえ、夜半までの笑いのタネになりましたし。今はほら、さっきの通り、無事店頭にも立っていましたから大丈夫ですよ」
 番頭を使う立場の柔和な翁。狭山屋は万屋の屋号であり、彼は店主――当然ながら天狗でもある。
 そしてサングラスの翁もまた人間ではない。
「これは俺らのケジメの問題だ。次は同じしくじりをさせねぇよ、すまなかったな」
 狭山屋は苦笑しつつこれに応じながら、彼の背後の異変を指摘する。
「瀧(たき)さんもあんまり目くじらを立てないで。その若い衆が後ろで困ってるようですよ」
 瀧は振り返り、目線の高さは変えないまま、何も無い空間に視線を突き刺す。
「なんでぇ、突っ立ってねぇで何か言ったらどうだ」
 不機嫌そうなべらんめぇ口調で問いかける彼に、姿隠した人物からの応答は無い。何も無い空間から紙片が小刻みに震えながら差し出され、彼はそれを手にして舌打ちを一つ。
「悪ぃな、呼び出しだ」
「御山からでしょうかね? ご苦労様です。こちらも何かあったようですし」
 言って狭山屋は、姿の見えない「若ぇ奴」がさっきそうしたように紙片を渡してから、自身の数間先まで駆け寄って来た人影の方を向く。
「どうしました?」
「大旦那様、御山からの繋ぎです。ひとまず店頭に留め置いております」
 それを受け、狭山屋は盆に代金を置いて店に戻ってゆく。
「おい」
 彼を見送った瀧が、まだ側に居るであろう透明な人物に低い声で呼びかけると、
「ひゅいっ!」
 返事の代わりに対照的な細く甲高い声が返る。
「俺達も行くぞ。てめぇ絡みの件もある、面倒ごとはとっとと片づけろ」
 茶を一息に飲み干して席を立った彼の後に、力無い小さな足音が続いた。

 狭山屋に店主が帰ると、客の応対をしていた者以外の店員は一同にそれを迎えた。
 彼はいちいちとそれに応じながら、不意に一組の少女らに目を留める。
 歳とやりとりだけを見れば姉妹と見えなくはないが、妹と見える女児はよく見る顔であるし、姉などは居ないはず。それに姉と見えた少女だけが旅姿でその髪はゴワゴワとした白髪頭、こちらも彼には見覚えのある人物であったのだ。
「おや、どうかしましたか? 椛さん」
 おかっぱ頭の女児の、一房だけ結い上げた髪に櫛をとっかえひっかえし、こちらが良いあちらも似合うと鏡を見せていた少女に呼びかける。
 少女は呼びかけられて初めて彼の存在に気付いた。
「こ、これは申し訳ありません、店主殿。いえ、この子の母が財布を忘れたとかで家に戻ってまして、幼児を延々歩かせるのを忍びないからと」
 店員が面倒を見ていたところを目にしてついついと相手をしていたのだと、椛はややしどろもどろとなって答える。
「いえいえ、貴女は昔からそうでしたねぇ。そうそう、あなたもお母様にはひいきにしてもらってますから。椛さん、これを付けてあげなさいな」
 言って彼は、大粒の南天をあしらったシンプルな玉かんざしを取り出させ、椛に手渡す。それは椛が、まとめた白い髪に挿す物とお揃いの品。
「要件はまあ、このお子のお母上が来てからでもよろしいでしょうし」
 椛は少し戸惑ったが、言われたとおりによく女児の相手をし、彼女の母が訪れると名残惜しそう手を振って別れを告げる。
 もうよいだろうかという頃合に店主が誘うと、二人は店頭から店の奥へ向かう。
「ところで御山から連絡員がおいでと聞きましたが、貴女の事ですか?」
 人の目が無くなったと見るや、彼は歩みを進めながら椛に問いかける。
「はい、仰る通りです」
 客間に着いた椛は勧められるまま座布団に腰を下ろし、その上座に店主が座する。
「その姿では落ち着かないでしょう、化身を解いては?」
 部屋から見える庭は塀で囲まれ、辺りに人の姿は無い。
「しからばご無礼を、桜坊様」
 彼女はまたも勧められるまま彼の言う化身を解く。その頭にはたちまち山犬の耳が、腰の下には同じく尾が現れた。験力未だ満ちぬ白狼天狗、犬走椛の姿である。
 僅かに本来の姿を戻した椛に対して、化身も何もしない彼、桜坊。
 古くは大智の僧であった彼は、人の世における入定(にゅうじょう)ののちに武蔵御岳(むさしみたけ)を治める大天狗となった。
 しかし博麗大結界の成立に程近い時期に、師であり当山に勧請されていた蔵王権現(ざおうごんげん)が国家的事情により退くと、殊勝に小天狗に降格し、やがて幻想郷に至ったのだ。
 彼の場合、老爺の姿こそ本来のもので、別に体まで小さくなったという訳ではない。
「改めて、お役目ご苦労様です。察するに河童衆にもお呼び出しが掛かったようですが、もしかしてそっちと同じ用件でしょうか?」
「多分。いえ、そちらは三光坊(さんこうぼう)様の所掌ゆえ詳細は存じ上げませんが――」
 椛は、自身が三光坊とは別の権現格の天狗、同じく妖怪の山の名代組織『御八葉(おはちよう)』に属する大天狗である大山伯耆坊(だいせんほうきぼう)の命により出向いたのだと伝える。
「――私が申しつけられたのは、近頃村邑駐屯吏(そんゆうちゅうとんり)の動きが多く見えるため、それについての子細を求めよと。無論月例の詳報がしかと為されているのは私も存じておりますが」
 駐屯。もしこれだけの数の妖怪が人里を拠点に動き回っていると人々に知れ渡れば、里は大混乱に陥るだろう。それを押しても彼らはここに屯している。
 いかに素速く空を征く天狗であったとしても、妖怪の山から離れた下界での事態全てに対応するのは難しい。それに彼らには風繰りの通力を用いた風難除け、より重要な火伏(ひぶせり)の役目も課せられている。このために『駐屯吏』は人里に常駐させられているのだ。
「伯耆坊様のお指図でしたら成るほど、事が起こるより先に予防策を取られよと暗に示しているのでしょう。出来れば直接申し開きしたいものですねぇ」
 世間話にでも赴こうとしてる風に言う桜坊に、椛は「はぁ」と生返事で応じる。
「まったく。旧正月を迎えれば桜坊様もお役御免、十干が巡って次の上番となるまで好きなだけ話を聞けるでしょうに」
 縁側から別の男の声が近付く。
「とは言ってみたものの、使いで来ているお前にする話ではないか。大旦那様、蔵の在庫確認が終わりました。異常はありません」
「善八郎様、お久しぶりです!」
 椛がパッと顔色を明るくして呼びかけると、彼は力強く頷いて答える。
「うむ。此度の使いも伯耆坊様の計らいと見れば、まあ悪くはないか」
 三者は大変和やかに視線と言葉を交わす。
「ご苦労様でした。善八郎さんもお上がりなさい、そろそろお茶や茶菓子も来ますから」
 彼が迎え入れられると、馴染み同士で談笑が始まる。そんな風に世間話を交えながらなので本題に入るまでやや時間がかかったが、椛はむしろそれを楽しんでいた。
「――とまあ、大体が怖い物知らずの若者の興味本位か子供らの腕白が原因だ。お陰で我らの『天狗攫い』を、本来の原因である都市伝説に取って代わりかねないほどせねばならなくなってしまった」
 桜坊に代わり、善八郎が昨今の里や邑の動向を椛に報告する。興味本位で時と場所の禁忌を犯すのは、貸本屋の娘に限らずおよそ年若い者の仕業だ。
「オカルト、ですか?」
 しばらく前に下界でそんな異変があったのは、椛もその大きな耳に挟んでいる。今も人里に現れるそれは、その名残とされる物であろうか。
「そうそう、射命丸さんも情報操作をしてどうにかしようとか苦心してくれているようです。もし伯耆坊様が予防施策も併せてご所望なら、射命丸さんの案の積極採用を進言されては? 彼女なら公に御山の支援があれば、広汎な都市伝説にも対応できるでしょうし」
 鴉天狗、射命丸文の情報整理能力とキャッチャーな新聞記事作りの腕を褒めそやしながら桜坊が重ねて言うと、椛と善八郎は揃って眉を寄せ、明らかに嫌そうな貌を作る。
「おや、どうしました?」
「恐れながら、桜坊様のお言葉も尤もなのですが、彼奴が絡んでろくでもない事になったためしがあまりに多いものですから」
「私も善八郎様と同感です」
 揃って嘆息する二人に桜坊は反駁せず、半ば同意と笑顔で頷く。
「何とかと彼んとかは紙一重と言いますからね。時にその射命丸さんはお元気ですか?」
 文が人里にちょくちょく訪れているのには彼らも気付いているものの、その消息はオカルトへの対応の他、新聞の発行と記事の内容から後になって知れる程度でしかない。
「ええまあ元気と言えば元気ですが、そのちょっと、昨年中のしくじりが響いてまして」
 いつもは遠慮無く文をこき下ろす椛が歯切れ悪く言うのに、善八郎が察して問う。
「そう言えば奴め、先の都市伝説の異変とやらにも月人絡みの件でも、表立っては首を突っ込んでいなかったな。ひょっとしてその手前……天邪鬼の件でか?」
 それには椛も一枚噛んでいた。故に文への非難が和らいだ事からそれかと気付いたのだ。
「その通りです、天邪鬼追討の一件。御山では二度に渡る侵入のみが問題とされて、それは一応解決したことにされているのですが、件の天邪鬼は行方知れず。またスキマ妖怪、八雲紫が主張していた背後関係も不明なままでして」
 天邪鬼追討に付随して、文達も関与した謀。
 鬼人正邪が少名針妙丸に輝針城異変を起こさせた動機の、更に大元。そして彼女らに力を与えた『打ち出の小槌』のパワーソース。
 それらを解き明かそうと妖怪の賢者、紫が画策した一連の動きだ。
 前者は異変の手前で旧地獄のモノ達に反乱をそそのかした延長――暴走であったのは椛達も知り得たが、彼女にそれらをさせた小槌のパワーソースが何者であるのかが未だ不明。ある推理では、その先でとんでもない陰謀論にも行き当たっている。
 紫は独自に探索を続けているらしいが、元々神出鬼没なスキマ妖怪のすることなので、こちらは千里眼を持つ椛をしても動向はようとして知れず。
 文はこれら天邪鬼逃走劇の際の独断が明らかになり(幸いにも上層部に責を糾されたのは紫も直接出張った最終局面に留まった)、おおっぴらな行動を自重する羽目になった。
 ちなみに彼ら二人が上層部以上に事情を知っているのは、椛と桜坊の伝手のお陰である。
「人里に害が及ばなかったからよかったものの、あんな掟知らずの危うい妖怪を泳がせるとは、妖怪の賢者らしからぬ無茶を考えたものだ」
 人里や近辺守護の任を担うモノとしての正直な感想。椛もそれを聞いて頭と耳を垂れる。
「いや、彼奴の所業とは言っても必要なものだったとは分かっている。ただ我らに一言だけ欲しかったと思っただけだ。たとえ御山に知らせずともな」
「それは――」
 先んじて文に止められていた。彼女は理由を話さなかったが、知らせてしまえば万一の際に累が及ぶ。それを恐れたのであろうと椛は解していた。
「知らなくていいこともあるものですよ、善八郎さん」
「はっ、左様でありますな」
 彼も諭されて、改めてただの愚痴だったと強調する。
「ですが私も、旧地獄の方があの後どう動いたのかは知りたいですねぇ」
 正邪逃走劇の最後の場面。
 紫の登場のすんでで旧地獄の妖怪――土蜘蛛の一人が相対したのは、妖怪の山のみならず居合わせた各勢力が知っている。地底の妖怪が異変に際して地上に現れたのは、駐屯吏としては一大事と呼ぶには十分な出来事であったはず。
 しかし、地底の妖怪が堂々と地上に現れるのを許した挙げ句、大々的に指名手配した天邪鬼をも取り逃がした事実は、妖怪の山を始めとした地上の妖怪にとって公にできる状況でもない。臭い物には蓋と、その時躍り出た土蜘蛛の存在は無かった事にされた。
 天邪鬼の行方同様その意図は不明なまま、彼女は元通り地下に潜んでいる。

      ∴

 旧都は地底に相応しい季節となってますます賑わっている。
 冬の何が相応しいのか。廃獄となった焦熱地獄特有のじんわりとした地熱の恩恵を受けながら、地上より程良い具合に降る雪に、荒くれ者ですら風流を知ることができるからだ。
 地底に雪が降るのは不思議かも知れないが、花吹雪すら舞うのだから冬に雪が降るのはなんらおかしくない。はずである。
 旧都の往来に沿って広がる猥雑な界隈は、常夜の天井を彩る雪の風情を吹き飛ばさんばかりの喧しさに包まれている。地上の拙いお囃子すら荘厳な法会の音と聞き違えるほどの。
 そんな旧都の盛り場でも一際大きな喧噪を抱く一角。レトロモダンな居酒屋の店先に店を広げた一団が、一本角の鬼を中心に雪見酒と洒落込んでいた。結局、雪より酒である。
「いやあ、年の瀬だからって言ってもこんなに集まってくれるとは思わなかったねぇ!」
 一本角の鬼、星熊勇儀が高らかに笑いながら、宴への新たな参加者を歓待する。
 地上との行き来が憚るようになって長らく経った地底の暦は新旧混沌。とは言え旧都も地上と同じくふた月前には正月を迎えているのだが、呑む動機になればなんでもいいのだ。
 場には既に、勇儀と同じ『鬼』と呼ばれるタイプの種族や、畜生頭の妖怪達が集っている。そこに加わった新たな一団は、黒谷ヤマメを先頭に据える坑道から上がった土蜘蛛一行と、いかにも嫌々という風にたたずむ橋姫、水橋パルスィ。
「何言ってんだか。あんたが呼んだのに逆らったりしたら酷いことになるでしょ」
 自分はあくまでもヤマメの頼みに応じたのだと、パルスィは宴への参加の強要をなじる。
「へっ? 私は来てくれたらいいなー、って程度に言ったんだけどなぁ。面倒くさい取り巻き共も、天邪鬼の一件の後はコソコソしてて出て来ないし」
 不義や不調法に事細かな文句を吐いていたのは彼らぐらいのものだった。
 勇儀が言ったとおり、鬼の威を借るだけ借り、先頃はまんまと天邪鬼の口車に乗って彼女への叛意すら見せた彼らは、今度は彼女を恐れて旧都の裏町に潜むか、奥地の鳥辺野まで落ち延びて怨霊の息吹に苛まれている。
 ただし勇儀自身はそれらを追う必要も無いと捨て置いている。気は優しくて力持ち、と言うのではなく、本当に取るに足らない話と考えているだけ。
 パルスィ招へいも勇儀がそうしろと命じたのではないし、出来ればの話としたのも他意は無く言葉通り。来なかったら寂しいと言うなら、それも本当なのだろうが。
 どこかで伝言ゲームにでもなったのかと勇儀は首を傾げ、後ろでは直参の鬼達が愉快そうに二人の様子を眺ている。それとは対極に、橋姫の怒りに触れたのではないかとヤマメを含めて土蜘蛛達は戦々恐々。
「いやね、だからパルスィ。折角のお招きだし一緒に来た方が楽しいよーって、姐さんもお呼びだからーって、そう言っただけなんだけど」
 土蜘蛛達はヤマメの言葉で一同揃って首を縦に振る。
「なぁんだ、どっちにしたってヤマメを心配してやっただけの話か。パルスィも優しい所があるじゃないか!」
 出来ればそれを私に向けて欲しい物だと豪気に笑いながら、勇儀は一升の星熊盃をたちまち空けてしまう。
 そもそも土蜘蛛は媚びへつらう輩ではないのだ。たとえ鬼に使役されているように見えたとしても、それはあくまで彼ら彼女ら自身の自由意思による。
 本当に勇儀がパルスィの招へいを命じていてそれが叶えられなかったとしても、恐れおののくが故にひれ伏す彼らでは――パルスィに怯えているのはさておいても――ない。
「ふん、あんたみたいに何でも笑い飛ばす奴に優しくする必要なんてどこにあるんだか」
 それもそうだと、勇儀は言われた通りにますます高笑い。パルスィは皮肉も通じないのが苛立たしいやら妬ましいやらと、その緑眼をらんらんと輝かせ始める。
「ま、まあパルさんも折角来たんだから一緒に呑もうよ。橋の袂で一人酒より――」
 寂しく一人酒の何が悪いと、緑眼がヤマメの方を向く。
「――いやその、なんでもないです……」
 ヤマメの侘びに、パルスィはフンと鼻を鳴らしてから、勇儀らが雪見酒を催すテラス席よろしく路上まで張り出した席――ではなく店の奥へ向かう。
 土蜘蛛達も安堵した様子で、見知った顔を認めながらそれぞれ空いた席に向かい、ヤマメだけがパルスィの後に続く。
 憤りも収まったのかパルスィは平静な顔で周囲を見回し、いつもと違う様子に気付く。
「それにしてもどうしたのよ、いくら年末だからって普段はこんなに集めてないじゃない。それに滅多に見ない顔までいるし」
 パルスィが言うモノはおおよそ鬼。視線が向く度に歓迎の意を持って杯を掲げる気の良い者達、言い換えれば心にそれだけの余裕を持つモノばかりだ。
「温羅(おんら)さんに、嵐山の鬼鎮(きじん)さん、茂吉(もきち)さんなんてこの前からずっとじゃない? それに三吉さんまでどうやって来たのよ」
 呼ばれた鬼達は、顔を覚えてもらえて恐悦と、酒精を入れずとも赤い顔を揃って破顔させる。滅多に見ないとは言われたものの、いずれも今の外の世界ですら名のある者ばかり。
 正邪が旧地獄に下克上を持ち掛けた時、ちょうど地獄の任官査定の輔佐で訪れていた茂吉鬼だけは、「俺は一度帰ってからまた来ただよ」手を振りながら応じる。
「やっぱり何か訳があって呼んだのね」
「ああ、訳があって呼んだ。ヤマメにはどうしても来てもらわなくちゃならなかったし、外で暮らしてるお歴々にも聞きたい話があったんだよ」
 何の企みか、鬼に横道は無いのではなかったのかと、パルスィが勇儀を咎める。
「企み、って言っちゃえばそうかも知れないけれど、主には情報整理だよ。何度も言ってるけどヤマメと一緒で頭を使うのは苦手なんで助けを借りたかったんだ」
「もしかして、天邪鬼の件かしら」
「それも一つだね。少なくともヤマメに来てもらった件はそれだ」
「ですよね……」
 今までそれが問われなかったのが不思議だったと、ヤマメが踵を巡らせ――ようとするのを勇儀は止めて自分の方から足を運ぶと、まんまとパルスィの側に居座る。
「結局こうなるの、本当に横道だらけじゃないの」
 パルスィは店の亭主が困り顔で差し出した枡を一息で飲み干してから問いただす。
「で、ヤマメの何が問題だったの? 差し違え……心中以外じゃあいつを本当に殺せないって言うなら、ああするしかなかったじゃない?」
 天邪鬼の身に込められた呪詛が尋常でない物なのは、勇儀もパルスィもその目で見た。
 なんの咎でそれが為されたのかは知り得ないが、人の皮を被って生まれては庇護者に殺され、あるいは逆に殺して本性を現すを繰り返す不死性。瓜子姫の寓話として多くの類話に謡われる、人にも最も知られた天邪鬼の姿のひとつ。何が何でも彼女をその因果に捕らえようとするために彼女を守るという、矛盾と共にある呪いだ。
 しかし同時にその内には神性を抱いてもいるとも地上からの情報が、加えて呪詛の一端を発露させた覚妖怪、古明地さとりが辛うじてその心奥から読み取った。
「いや、私も責めてるんじゃないよ。ただどうしてあんな無茶な発想になったのかを知りたいだけ」
 呪詛を破れるかも知れなかったのが、差し違えるでも特攻でもない、心中という無理筋。
 天邪鬼追討の最終局面、ヤマメは安全措置(スペル)を用いずに自身にも襲いかかる弾幕『樺黄小町』を放ち、己が身諸共に正邪を滅しようと試みた。その試みはすんでで、場に居合わせた天邪鬼追跡の首謀者、紫によって阻まれたのだが。
 その正邪はまだ逃げ続けている。となれば次の出現に備える必要もあろう。
「ふう、私は別の理由で責めたいけどね。自分だけ勝手に消滅して楽になっちゃうなんて、残された一族はどうするのよ」
 己は同胞など持たない、ただ唯一の橋姫と自負するパルスィが、常に同胞と共にあるヤマメをそう責める。パルスィにとって捨てられる何かを持つ者は、それだけで狂おしいほど妬ましい。それが決して捨てるべきでない、捨てられなどしないものではあっては尚更。
「いやだって別に、私が居ても居なくても、一族の誰がどうなるって事も無いし……」
「今の幻想郷が出来上がる前にここを見いだしたのも、お仲間をここに導いて来たのもあんたなのに。まあま、その話はさておきさ、天邪鬼のは何か理由があったんだろ。ん?」
 勇儀が僅かな苦言を添えてから話を戻すと、パルスィも要らぬ横槍だった自覚もあってそれ以上は話を重ねず、共にヤマメの返答を待つ。
 酒宴の喧噪の中にあって、三人の座す一角だけはシンとした空気が降りる。
「あいつ本人か同じ種族の別の奴かは分からないんですが、ずっと昔に、そんな哀れな天邪鬼に会った覚えがあるんです」
 ここに辿り着いてからのことも朧気にしか覚えていないのに、そんな古い記憶は不意に鮮明に蘇って来たりもする。そこに写し出された天邪鬼は、ヤマメに嘆きの声を上げてた。
「私の前でそいつは「妖怪が人にまじっちゃいけない」って確かそう言ってた、かな」
「理由とするにはは、抽象的すぎて意味が分からないんだけれど」
 天邪鬼の何が哀れで、ヤマメは何を見いだしたのか。ここに覚妖怪でも連れてくるかとパルスィが珍しく勇儀に視線をくれてみると、彼女は口許に手を当てて思案顔。
「なるほどね。天邪鬼がそう言ったと。そいつが本心から?」
「分かりません。でもこの前の件、田道間(たぢま)様があいつの企みの前にその身を費やして下さった時、思い出したんです。それからずっと考えてました」
 水妖などとても暮らせようもない旧地獄に、ひとりヤマメ達土蜘蛛の後を辿って住み着いた、広義に河童と呼ばれる種族の一つ『ひょうず』の元長(おさ)、田道間。
 まだ悼み続ける彼の末期と共に、かつて会った天邪鬼の記憶をヤマメは思い起こしたのだった。
「ごめん勇儀、また口を挟むわよ」
「おや珍しいね。パルスィが助言を呉れるなんて」
 いらぬ茶々に僅かな苛立ちをこめかみに浮かべながら、パルスィは疑問の解消を告げる。
「ヤマメの、かつての天邪鬼が言ったってそのセリフ、やっぱり本心じゃないかな。あなたが言ってたでしょ、あいつが背負わされた呪詛。それを施したのが神様仏様って。それが本当なら、私達全部合わせたのより酷い目に遭ってるのよ、あいつは」
「……本当に珍しいね、パルスィが誰かに気を遣うなんて」
「さっきも言ったわよ、私が気を遣わないのはあんたみたいに言っても打っても効かない奴だけって。それよりあいつの動機、行動原理、さとりには読み取らせたんでしょ?」
「ああ、古明地の曰く、一言で言ってしまえば「嘆き」だとさ。けど驚いたよ、ヤマメが言った話が記憶通りなら、嘆きとやらの正体はそれかも」
 もしかしたらパルスィは、さとりのようにその心の声を識閾上に引き揚げられずとも、聞いてはいたのかも知れなかった。音としては聞こえない地鳴りが却って心の底を脅かすかの如く、妬み嫉みを聞きたもう橋姫の耳は意識の外で捉えたのでは、と。
「ヤマメ、続けとくれよ。なんでここで田道間の爺様が出て来たのかも聞きたいけど」
「はい。姐さんも御存じでしょうけれど、田道間様達ひょうずの一族は人間に臣従することで安住の地を得ました。けど私達(土蜘蛛)は最後までそれを拒んだ、天邪鬼と同じく」
 異を挟もうとするパルスィに、ヤマメは微笑を向けてから続ける。
「本来なら、人に交じることで全部終わりに出来るはずだったんですよ。まだここに来る前に、いつの時点でか私達もそうしてれば。多分、恐らく……」
 勇儀がチラと外来の鬼達の方を向くと、彼らの一部は苦笑してもいる。決してそういう訳にもいかないのだと、今も外の世界に住む鬼達は知っていた。そうではあってもヤマメに否定の声を投げかけはしない。そうして暮らす者も確かに在るのだから。
「言ってもらっといてなんだけど、天邪鬼に限っては逆じゃないかなぁ」
「え?」
「天邪鬼の方はさ、やっぱり言葉通りなんじゃないかい? それをやらせるのが――いや、やらせないのがか?――そのややこしくエグい呪いってやつだろ。ねぇ、パルスィ」
「そうね。思い出してみて、ヤマメ。なぜ私達が今ここに居るのかを」
 なぜここに居るのか。
 侵し掠める生活はこの狭い箱庭にそぐわぬと、鬼はその身を地底に沈め、瘴気の中で暮らす土蜘蛛は他の妖怪との摩擦を忌避したがためここに至り、覚妖怪は千変万化する生者の声を避け、定まりきった拍子の怨嗟の声だけを求めてここに居館を築いた。橋姫は――
 否、パルスィが求めるのは旧地獄に住まうことになった理由ではない。それよりもっと根源的なものだろう。
 自分たちは元からこの姿だったのか。違うなら元はどうであったのか、自分たちを変えたのは何者だったのか。
――御許は覚えが無いと言うだろうが、わらわはたびたびも申しておったぞ?――
 少し責める風な声音がヤマメの脳裏に木霊する。
 もはや彼方の世ですら聞くことの叶わない懐かしい声。平安と呼ばれた暗澹とした世で、共に鎮西の地を北へ南へと短い旅をした旧き土蜘蛛の声が。
 ヤマメは不意に酷い喪失感に襲われる。辺りを見回してみても、パルスィと勇儀、それに同胞を含めた酔客の群れしか目に入らない。それが当然なのに。
 勇儀が不思議そうにヤマメの顔を覗き込む。一瞬だけ憂き世から離れていたヤマメは、すぐに元通りの思惟を進め始めた。
「うーん……私には覚えが無いけど、私よりずっと旧い、いや一番旧い土蜘蛛が言ってたのは聞いた記憶があるかな。あるべき姿をすげ替えてしまう呪詛のこと」
 彼女は、鎮西に多く立ち、やがては平定された巫女王の中の一人だった。
 ならば鬼も土蜘蛛も、ひょうずですら、ここに住まうモノは皆、元は全く別の何かだったのかも。当然橋姫もそうだったのだろう。
「そう、形骸をすげ替える――陰陽師にでも言わせれば“呪(しゅ)”という物。神代から上古に、善きにつけ悪しきにつけ、言霊を以て為された数多の業のうちの一つよ」
「まあ私ら(鬼)に関しては、乱暴狼藉が生業になってた訳だし、自業自得以外の何ものでも無いから恨み言の言いようも申し開きのしようも無いんだけどね。でも何をやらかしたのかは知らないけれど、天邪鬼はそんな私ら以上の非道い有様にされてる。ヤマメの同情もそこから来てるって言うなら納得するよ」
 如何に乱暴な外道ではあっても、義も情けも知っている。鬼はそんな存在だ。
 ああ、とヤマメは声を漏らす。整理しきれない自身の心を、この二人は代わって紐解いてくれたのだろう。それも己に責めが向かないように導きながら。
「奴とヤマメのそれぞれの動機はそんなところか。天邪鬼が元は何者で、事の始めに何をやらかしたのかは今後の調査次第としてさ」
 勇儀がヤマメへの詰問は終いと手打つと、辺りからはパルスィの語った“呪”に興味を持った者からの声が上がり始める。
 呪という物があるなら、己らは元々どんな存在だったのか。そもそも呪とは何なのか。これを口にしたパルスィ自身が、辟易しながら「下らない言葉遊び」などと適当に答えると、今度は思い思いに己の由来や来歴を、隣り合う者達と語り始める。
 彼らにとっては、マンネリ化した地底の話題よりも新鮮な一語であったようだ。
「それにしても、仮にも『鬼』を名に冠する奴を哀れむなんてどういう皮肉だろうと思ったけど、パルスィですら嫉妬する余地が無いような奴かぁ……」
 パルスィの糧や力の源は嫉妬。何が何でもそれを掘り返すか自身の内に生じさせるのが橋姫のさが。ただ口から喫する物と同様、好き嫌いはある。
「嫉妬の余地なんて探さなくてもあるわよ。色恋なんかよりずぅっと不味い物だけど」
「ほう、なんだい?」
「あいつには誰かが付けた名がある、それだけで妬ましい」
 名と呪は大変密接な関わりを持つ。今パルスィの持つ名はそれを避けるための、あえて陳腐な語の組み合わせでしかない。故に妬ましいと言ったのだ。
 勇儀はきょとんとしてパルスィを眺めた後、やおら笑い声を上げ始める。
「は、ははは。なるほどねぇ。パルスィにとっては、それだけで充分なのか!」
 言いながらどさくさに肩に手を回そうとする勇儀を躱したパルスィは、あちらこちらの放談に耳を傾ける。聖徳王のようにはいかずとも、それぞれに持つ由縁は興味深かった。
 解放されたヤマメも、ようやく盃に手を付けて同じくする。
 名に係る由来、縁。
 己もパルスィと大差無いはずと、古くは名も無いただの褐鉄山の女『ヤマノメ』であった事、黒谷の名も、安住の地を探す旅の途上で聞いた大蜘蛛にあやかただけである事などをヤマメは一切口には出さず、いよいよ盛り上がり始めた宴の片隅に沈み込む。
(ああ、そう言えばあの天狗さんの名前の由来、聞いてみたいな)
 商売絡みの交流もある河童、河城にとり達と比べれば決して多くは無いが、それでも幾度か言葉を交わした覚えがあり、河童と同じく同じ妖怪の山に住まう天狗、文。
 彼女も正邪追跡には大きく関わり、ヤマメが正邪に挑むのを陰ながら助けたのを人間の魔法使い、霧雨魔理沙から聞き及んでいた。
 にとりについては山の巫女、東風谷早苗が外の指物屋の名前だと言ってみたり、田道間などは何ゆえか「陸奥(みちのく)の河童か」などと問うてもいた。しかし、名に『丸』と冠した天狗については、今もその由縁を聞いた覚えが無い。鬼でも無い天狗の名でだ。
 かつての、田道間にも出会った旧き土蜘蛛との旅の最中で対峙した天狗もその一字を冠していたのを朧気に思い出しつつ、ヤマメは意識を天蓋の方へ向けた。

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