東方二次小説

こちら秘封探偵事務所第14章 深秘録編   深秘録編 プロローグ

所属カテゴリー: こちら秘封探偵事務所第14章 深秘録編

公開日:2021年01月30日 / 最終更新日:2021年01月30日

まず、初めにお断りしておきたい。
 今回のこの記録は、今までの私たち――《秘封探偵事務所》が首を突っ込んできた異変の記録、我が相棒・宇佐見蓮子の誇大妄想的推理の物語とは、根本的に性質が異なるものとなる。
 もちろんこれも、異変の記録には相違ない。あの《都市伝説異変》――例によって例のごとく、そこへ首を突っ込んだ私たちの物語の記録であることに違いはない。
 だが、その異変は、私たち自身の異変だった。

 あの日。二〇八〇年代の東京、蓮子の大叔母・宇佐見菫子さんの部屋で見つけた一冊のノートと、虫入りの琥珀に導かれて、この幻想郷に迷い込んだ私たち。
 それから永い時を経て、とうに幻想郷に骨を埋める覚悟を決めた今さらになって、突然に蘇ってきた、私たちにとっての最大の謎。これは、それについての物語だ。
 私たちはなぜ、誰によって、この幻想郷に招かれたのか?
 私たちの知る未来で、宇佐見菫子さんはなぜ昏睡状態に陥ったのか?
 私によく似た顔をして、蓮子の前に現れない、妖怪の賢者・八雲紫とは何者なのか?
 ――そう、この記録で私と蓮子が挑むのは、私たち自身の謎そのものである。

 とはいえ。
 この記録を書いている現在も、私は結局、何も解ってなどいないのかもしれない。
 謎は解けたのかもしれないし、解けてなどいないのかもしれない。
 本当にこれが、私たちの謎だったのかどうかさえも、本当は定かではない。
 そして――私たちが選択した答えは、正しかったのか、間違っていたのかも、私にはわからない。わかるはずもない。
 全ては幻想のままに。夢と現の狭間にたゆたう、うたかたの幻に過ぎないのかもしれない。

 だけど、相対性精神学の徒として、私はひとつだけ、私自身の決意表明として。
 かつて外の世界の京都で暮らしていた頃の、相棒の言葉をここに記しておきたい。

 さぁ、目を覚ますのよ。
 夢は現実に変わるもの。
 夢の世界を現実に変えるのよ!

 つまりは、たったそれだけの物語だったのかもしれない。

 いささかポエジーになりすぎた。独りよがりな妄言はこのあたりにして、語り始めよう。
 私、マエリベリー・ハーンと、名探偵、宇佐見蓮子の物語を。
 オカルトサークル、秘封倶楽部の物語を。
 絶対に出会うはずのなかった人との、出会いの物語を。
 絶対に出会えるはずのない人を、捜し求め続けた物語を。

 全ては――《都市伝説異変》の一年前、幻想郷が天の邪鬼大捕物に沸いていた春。
 妖怪の賢者が我が事務所にもたらした、ひとつの依頼から始まる。

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この小説へのコメント

  1. 待ってましたああああああ!!!
    と言いつつこの謎は解けてほしいような、ほしくないような

  2. この時をずっと待っていました!今からワクワクします。

  3. 続きが来た嬉しさと終わりが近づく恐ろしさで心が混沌としてます。

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